儚く散る桜の花びら






男たちは扇子を構えた少女を見てラッキー、と思った。



秀麗と名高い少女の闘いはめったに見られる物ではなく、しかもその闘いを見た人は少女の闘う姿に魅了され、もう一度見たいと願う。



いくらボスの命令でも、少し見てから捕まえてもいいだろう。どうせ、ボスに引き渡したら、もう見れなくなるだろうから。


ドキドキしながら、でもちゃんと構えながら、少女が目を開けるのを待った。



ゆっくりと少女の目が開いたと思ったその瞬間、ヒュッと音がしたかと思うと、一番前にいた男がいきなり後ろへ倒れた。男たちは何が起こったのか分からなかった。




少女は扇子をまっすぐ構え、男たちと向かい合う。
少女の周りには桜の花びらが。


そこでようやく、あぁ、コイツがやったのか、と分かる。


そのときにはもう遅かった。


また音がしたかと思うと、目の前には少女がいる。



「やめっ…うわっ!」
「ぐっ…」



どんどん仲間が倒されていくなか、男が一人、動かずに立っていた。



黒のなかに一つだけ、優しい桜色。



とても幻想的なそのコントラストは、どこか夢を見ているようで。







いつのまにか仲間を倒していた少女は前にいて、次の瞬間、お腹を鈍い衝撃が襲ってきた。


「っ…ぐっ!」


朧気になっていく頭のなかで、桜の花びらを纏う少女を、儚く散る桜の華のようだと思った。





「桜華…」




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