戦いに必要なもの





「…?」

「何?それ」



俺と菜乃佳は二人で首を傾げる。



隼人は目をきらきらと輝かせて、いつもきりっとひきしめられている顔が幼く見えた。



俺の顔の前に依然として突きだされているのは、一辺5pぐらいの真っ赤な立方体で、正面には面いっぱいの黒い髑髏。

そして、面を髑髏と同じ黒くて丸いストーンが縁取っていた。


「…わかんないよ」



菜乃佳がわからないことに悔しいのか、しょんぼりと言うと、隼人が菜乃佳によく見えるようにその立方体の角度を変えた。


…あれ?

チラリと上の面の中心が丸く窪んでいるのが見えて、何かが頭をかすめる。



なんか最近見たような…?

なんだっけ

んー…?



「わかった!」



俺はポンっと頭に浮かんだものにスッキリして声を上げた。



「ボックスだ!」


「…そっか!」



菜乃佳も少しその立方体を見つめ直して納得したように笑い、


「そうです
自分でカスタマイズしたんです」隼人も自慢そうに笑った。



「すごーい!
隼人好きそうだもんね、そういうの」
「今日1時間つかった」
と、二人で楽しそうに話しているのをよそに、俺はふと思い出した。



「そういえば…
実はボンゴレボックスもあるんだよ」



カラフルな、7つの立方体が頭に浮かぶ。



「ボンゴレボックス…?」


「うん
ボンゴレリング用のボックス
て言っても、ボンゴレリングがないから使えないんだけどね」


あはは、と苦笑したとき、菜乃佳が拗ねたような顔をしているのに気づいた。



「…菜乃佳にはリングがないから、ボックスなんて使えないもん」



…そうだった

菜乃佳の炎は淡い桜色で、今まで発見されたことのない種類の波動だった。


その淡いピンクの炎は幻想的な、妖しい雰囲気を醸し出し、相手を惑わせる。


大空の"調和"のようにその炎を表すとしたら"誘惑"とでも言うのだろうか。



…この炎を持ってるのは、今この世で菜乃佳一人だと思うし…
しかも菜乃佳はその炎をリングにではなく扇子に灯しているから…

ボックスがないのは当たり前なのかもしれない



「…ツナ?」


「ん?」


「どうしたんですか、黙りこんで…」



気づかないうちに俯いていた顔を上げると二人は心配そうに俺を見ていた。



「なんでもないよ…」



…この時代にボックスがないのは、もし菜乃佳が敵に追い詰められたとき不利になる

今度恭弥さんに相談してみようかな






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