:: 可愛いあの子

「…なんで機嫌悪いんだよ」

「…別に悪くないよ」


悪いだろ!

ぶすっとして、
口尖らせて。


そんな顔して、どう機嫌が悪くないんだよ。



「…うそつけ」

「…うそじゃないし」



声だっていつもより低いし、

なにより
目を合わそうとしない。



「なんだよ
人がせっかく会いに来たのに」



そっちがその気なら俺だって。


「…っ、あたしだってさっきわざわざツナのところに行ったのに!」


「…」



かっと目尻を赤く染めて叫び、はっと口をおさえる。

気づいたときにはもう遅い。



たしかに、

さっき来てた…ような?

仕事に集中しててあんま覚えてない。



てことは…。




「…おいで」


手を広げて呼べば、のそのそと、膨れっ面のまま俺の腕の中にすっぽり収まった。


拗ねててもくる彼女が可笑しくて笑いそうになったけど、今笑ったら余計拗ねそうだから頑張ってかみ殺す。



「…ごめん」



どうしたら許してくれる、と聞けば。



「…………チューしてくれたら許す」



…可愛すぎるだろ、おい。


あぁもう、
愛しいとか、好きとか、愛してるとか、大好きとか、可愛いとか、色々混ざりすぎてわからない。




ぐるぐると、そんな思考が回るなか、彼女が何も言わない俺の様子を窺うように上目使い。


それにトドメをさされた俺は、もう思考とか理性とか放棄して、彼女に噛みついた。





かわいいあの子。








2012.05.17 (Thu) 22:05 (0)


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