サプライズを君に
「ちょっと和、一体何の用なのよ」
資料室の扉を開け、中に向かってそう声を掛ける。しかし、あると思っていた返事はなかった。
眉をひそめたカザハは、スタスタと室内へ入り、並ぶ書棚の間を一つずつ確認していく。そのどこにも探し人の姿はなく、眉間に寄せられた皺がさらに深さを増した。
「まったく、どういうつもりよ」
どさっとソファーに身を投げて腕を組む。
『放課後、資料室に来てくれよ』
そうカズキに言われたのは今朝のこと。なんであたしが、と言いながらも気まぐれに顔を出してみれば、呼び出した本人がいないとはどういうことか。
苛々とソファーの肘掛けを指で叩き、しばらく待ってみてもカズキは現れない。
舌打ちをしたい気分で立ち上がり、お茶でも飲んで気を紛らわそうと茶葉の置いてある棚を開けた。
「……あら?」
茶葉の缶に立て掛けるようにして、薄紫のリボンが巻かれた白い袋が置いてある。それを手に取ったカザハは、しげしげと眺め、ふいに口の端を持ち上げた。
「サプライズってわけ? 生意気ね」
悪態をつきながらも、お茶の準備を始めたカザハの表情は、先程よりも随分と柔らかかった。
END
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