「――めでたしめでたし」
お決まりのフレーズで締めくくり、にこりと笑う。
「昔話も悪くないでしょ?」
「……かもしれないですね」
「だよね。あ、体動かして発散したいってんなら付き合ったげてもいーよ」
ピョンと立ち上がったヒロムが、軽く構えを取る。悪くないかも、と思いながらカザハも立ち上がる。
一定の距離を取って、不敵に笑った。
「昔と同じと考えてると痛い目見ますよ」
「お、言ったなー」
一瞬にして、張り詰める空気。だが、何故かヒロムは唐突に構えを崩した。両手を頭の後ろで組み、柔らかな笑みを浮かべる。
「やっぱさ、カザハちゃんはそれがいいよ」
「それ?」
「強気で不遜であたしが一番!っていう雰囲気?」
「あたしに聞かないでくださいよ。ってゆーか、失礼じゃないですか、それ」
「えー? 誉め言葉だって」
くすくすと笑うヒロムに、カザハもいつの間にか頬を緩めていた。
――そう。まったくもってその通り。それこそが羽岡カザハという人物だ。
それをヒロムに指摘された悔しさと、それとは別の何か。正体不明のそれがもどかしくも、どこかで安堵する自分におかしくなった。
「……認めざるを得ないわね」
「ん? 何が?」
ぽつりと漏らした呟きをしっかり拾われてしまって、カザハは苦笑した。
「先輩が先輩だってことです」
「何だよ、それ。バカにしてたら怒るぞー?」
「誉め言葉ですよ」
さっきの言葉をそっくりそのまま返して、カザハは笑った。
風が、また髪をかき乱していく。
さっきと同じようで違う。風も心も似たようなものだと思いながら、カザハは迷いのない眼差しで空を見上げた。
END
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和泉様:S*S
Twitterでの募集にすかさず挙手しちゃいました!
凄く先輩らしいヒロと弱ったカザハという意外な組み合わせもですが、毎度ニヤニヤ要素を巧みに織り混ぜて下さる…!
今回も非常にニヤニヤさせて頂きました(笑)
素敵なお話ありがとうございました!
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