ふうは口元に笑みを湛えている。でもラベンダー色の瞳は笑っているように感じられなくて、二人はなかなか二の句が継げなかった。ちらりと視線を交わすと、先にメネが口を開いた。

「それは勿論、可愛い相棒の様子を見に来たのよォ〜。そしたら偶然オミと出くわしてね、ちょっと遊んであげてたの」

「遊んでって……! ちょっとめーちゃん、何だよそれ」

「あらァ、事実でしょ〜」

「どこが……!」

「ああ……また」

 再び言い合いを始めてしまった二人に、ふうは大きく息を吐いた。呆れを通り越して怒りすら湧きそうだ。
 全身に迷惑という名のオーラを纏い、冷ややかな視線を送る。それでも平行線を辿る応酬を続ける二人は気付かない。
 正直止めるのも馬鹿らしくなったふうは、仕方なくもう一つの出入口に向かうことにした。勝手にどうぞというのが本音だった。

「あ、ちょっとどこ行くの鳥越ッ!」

「待って待って、俺も行くよ!」

「…………」

 無言の訴えには気付かないくせに、どうしてそっと取った行動には素早い反応を返すのか。つくづく分からないとふうは痛むこめかみを押さえた。

「あのね、二人とも……恥ずかしいからもうやめよう?」

 振り返り、あえてにっこりと笑みを浮かべながら告げたふうに、しかしヒナタは不思議そうに首を傾げた。

「恥ずかしいって何が?」

「きっとアンタのことよォ。鳥越ごめんねェ〜、今度よーく言っておくから」

「…………」

 だめだこいつら、と瞬時にふうは理解した。勿論口には出さないが。
 重々しい溜め息が口をついて出た時、目の前で交わされる囁きがかすかに耳に飛び込んできた。

「残念だけど勝負はお預けだな」

「そうねェ。無事鳥越に会えたから良しとしましょうか。今回は、ね」

「…………」

 つまり、また次があるということだろうか。その光景と、諦めが肝心という言葉が脳裏をよぎり、ふうは思わずぞっとする体を抱きしめた。
 そんなふうの心境を知ってか知らずか、ヒナタとメネは呑気に会話を交わしていた。ふと、メネが思い出したかのように軽くヒナタの背を叩く。

「さっきの、一つだけ認めるわ」

「え?」

「それはねェ〜」

 にやりと笑ったメネは、とんっと地を蹴った。勢いよくふうに抱きつく。

「鳥越が世界一可愛いってことよォ〜」

「あ、こら! どさくさに紛れて……!」

 ――そして、何とかメネの腕の中から抜け出したふうは、また巻き起こった騒ぎに今度こそ背を向けて歩き出した。

END

________
和泉様:S*S


今度は17期の年長三人・メネ、ヒナタ、鳥越の日常風景を書いて下さいました!
何度もリテイクして下さって本当にありがとうございます…!
もう三人の行動そのもので、私のニヤニヤが一向におさまりません(笑)
素敵なお話ありがとうございました!



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