「……は?」
「ねぇねぇ、あたしかわいいでしょお? ダーリンのために可愛くなったんだぁ……」
「え、ちょ、何それ」
「ダーリン、ダーリンはあたしのことぉ……」
急激すぎる展開にナウいの頭は真っ白になっていた。
何故、俺は押し倒されている!
何故、花嫁に押し倒されている!
何故、花嫁(男)に押し倒されている!?
ナウいの混乱を放置しヒロは妖しく笑いながらナウいに迫っていた。男の割に細い体がしっかりと密着している。真っ白になったまま硬直したナウい。
さてどうなる、どうなってしまうんだ!
と思われたとき。
ガチャッ
「やっほー★ 呼ばれて飛び出たトキメちゃんでーすっ★」
場は静止した。
突然開かれたドアからはウサギのぬいぐるみ……の中から更に飛び出た霊体トキメ。彼女の目に映ったのは女装したヒロに押し倒されているナウいと満面の笑みのメネ。
「…………」
「…………」
ナウいの頭が稼働を開始した。
「ヒロ先輩かっわいー! ……の前に、ええとぉ……」
霊体トキメは頬に人差し指を当てるぶりっ子ポーズで眉を下げ、困ったような笑みを浮かべた。
「ナウ先輩がそんな趣味だったなんて知らなかったなぁ★ 今度時音ちゃんに教えてあげようっと!」
そしてしゅるると霊体はウサギの中に戻る。
ウサギ版トキメはにや、と笑って手を振った。
「早速伝えてきまーす★」
「とっトキメちゃぁーん!!?」
ナウいの痛切な悲鳴が上がる。が、トキメはるんるんと回れ右してしまっていた。
「違う! 違うんだトキメちゃん! 俺はトキメちゃん一筋だよー!!」
滂沱と涙を流す勢いで起き上がり這い縋るナウい。しかし後の祭りである。
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