今居時雨、通称ナウいは学生会本部館の廊下を歩いていた。丁度予定のない頃合いを見計らってか「一人で来なさいよォ」とメネに呼び出されてしまっていた。
 ひしひしと嫌な予感を感じつつ、それでも逆らえるほど強い立場でもないので不安にさいなまれながらも律儀にその場へ赴いた。
 行きなれた部屋、第三会議室の戸を開ける。
「何の用事――」
 挨拶代りの第一声は途絶えた。
「っはァ!?」
 代わりに飛び出たのは悲鳴と言うか奇声。
「待ってたわよォ〜」
 呼び出した張本人、メネはのほほんと笑いながら片手など振ってみている。それよりナウいの衝撃の正体は隣だ。隣にいるのはなんと純白のウエディングドレスを着た美少女――ではなく
「ヒロ!?」
 という名の仲間だった。注:彼は男性です。
「ぷはは、ナウい変な顔ー! 驚いた?」
「そりゃ驚くよ! なんだい、何故呼び出されて来てみたらこんなことになってるんだ!?」
「そりゃあサプライズだもの」
「ねぇー!」
 メネとヒロ(花嫁仕様)は楽しそうに笑い合っている。ナウいは混乱を治めるように息を吐いて「落ち着け俺」と数回唱えた。
「あー、……それで? 俺に何の用事だい?」
 何とか状況を整理しようと努力するナウい。
 その言葉に待ってましたとばかりにヒロたちが怪しい笑みを浮かべた、のをナウいは見逃した。
「それなんだけどねェ、ちょっとナウ、こっちおいでなさ〜い」
「は? はあ……」
 メネにおいでおいでされ不審がりつつも近寄っていくナウい。
「なんです……っうわあ!?」
 すると突然勢いよく体を押された。ビビる間もなく後頭部がドガッと床にぶつかる。どこまでも涙目である。
 ぐえ、と呻きながらその涙目を開くと――
「はぁい、ダーリンっ」
 ナウいの上には花嫁(男)がいた。可愛らしい姿でナウいを押し倒していた。




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