「――ここ、何処か解るかな? 俺達、道に迷っちゃって。地名とか、何でも良いんだけど」
「すみません、私もあんまり詳しくないんです」
「……そっか、ありがとう」
「力になれなくてごめんなさい。私も人を探している途中なので、この辺で失礼しますね」

 少女はぺこりと頭を下げると、再び靴音を鳴らしながら俺達の横を通り過ぎていく。3・4歩離れた所で靴音が途切れ、闇の中から少女の明るい声が響いた。





「大丈夫、すぐに戻れますよ」





 完璧に少女の足音が聞こえなくなってから、カザハはふぅと大きな溜息を吐いて表情を崩した。良くは解らないが、当面の危機は去ったらしい。俺もつられて力を抜くと、彼女の肘にわき腹を小突かれた。


「何鼻の下伸ばしてんのよ、愚か者」
「の、伸びて無い! 筈! ……けど、なんだか不思議な子だったな。お前も随分静かだったみたいだし」
「いざって時に何時でも動ける様にしてただけよ。喋る余裕なんて無いわ」
「――何がそんなにヤバかったんだ?」
「……あんた、気付いてなかったの」


 何時もの様に馬鹿にした台詞か、罵倒かを待ってぐっと歯を食いしばるがそれは無く。カザハが口にした台詞は、馬鹿にされ罵倒された方がマシな程には、真剣味を帯びていた。




「あの子、血の匂いがした」





 未だに腰が抜けて立てない俺に手を貸しながら、カザハはふわふわと駆け寄ってくるトキメを遠くに見つめる。やれやれと首を振ってほっとした様に笑う横顔には、どこか微かな寂しさが混じっている様な気がした。



「全く。本当に、最悪ね」



ーendー
名度様:無人工場



名度さん宅のお子さんとコラボ小説を書いて頂けるとの企画に参加させて頂き、うちの理系高校生コンビと名度さん宅の憂鬱ちゃんを交流させて下さいました。
憂鬱ちゃんのミステリアスさとうちの子の抜け具合が見事に出されていて感激です!
憂鬱ちゃんは今回はどんな仕事に行っていたのでしょう…気になる。
素敵なSSありがとうございました!



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