「ラビ…?」
「何さ?」
「そろそろ離してよ…」


うわっ、オレ何してんだ!?

何故だかオレはずっとレイナのことを強く抱き締めていた。


「ごめんさっ!」


オレがレイナから手を離すと、レイナは「まぁ、良いけど…」と呟いた。


「ねぇ、今日は出掛けるの辞めよ…?仕事出来ちゃったからさ」


オレが「あ、うん。分かったさ」と返事をしたらレイナは目を輝かせて「あのさ!」と言ってきた。


「仕事手伝って!」
「………………は?」
「手伝ってくんないと、ラビのあーんなことや、こーんなことまでバラすぞコラ」


カツアゲー!?

ギロッとオレを睨むレイナ。


「何さよ…それ。ってか、オレは手伝わうわっ!」


レイナはオレが返事をする前にオレの手を引いて既に歩き始めていた。


「うぇ、ちょっと、ちょっと待てさよ!」
「待たないよーだ!」


結局、レイナの手を振りほどくことが出来ず、オレはレイナの仕事を手伝うことにした。


「ねぇ?あたしずっと疑問だったんだけどさ…。この人の苗字何て読むの?」


レイナが指差した文字は“御手洗”だった。


「この人の苗字…トイレ?」
「…え?」「だから、トイレって読むの?それとも御手洗いさん?」


真面目な顔で質問するレイナを見ていると笑いが込み上げて来る。


「こ、これは“みたらい”って読むんさよ…」


笑いを堪えながら言うと「何で笑うのよ!馬鹿!」とレイナに怒鳴られる。


「ごめんさ…」


怒鳴られてもまだ笑いが込み上げて来る。オレはそれを頑張って耐える。レイナは「あと…これも」とまた文字を指差す。


「それは“わかめ”さ」
「へー、若い芽って書いてワカメなんだね!」


レイナは「なるほど、なるほど」と言いながら頷く。


「ラビといると漢字も読めるようになるし、仕事も捗るし…正に豚に真珠だね!」


レイナ、美人で毒舌だけど国語弱いんさね。


「それ、違うさよ…。豚に真珠じゃなくて一石二鳥」


オレはレイナの頬をつねってやった。


「イテテテテ」
「レイナのバーカ」
「ラビのオシンコナス!」
「オタンコナスさ!!!」


国語の勉強をしよう
(教えるのはオレなんだから)

▽20110227