私はいつだって可愛くいたい。だって、可愛いって言われたいんだもん。今日も彼氏のゾロとデートだから、いつもはしないヘアアレンジをしてミニスカートに可愛い靴まで履いた。なんて言われるかドキドキしながら待ち合わせ場所まで行く。


「まだなの〜?」


一人、待ち合わせ場所に佇む。約束していた時間から約15分は経っているのにゾロは来る気配がしない。


「ハァ…」

「悪ィ」

「ゾロ!」


溜め息をついた途端、現れたゾロ。もう、遅いんだから。彼女の私を待たせるなんて。


「じゃ行くか」


ゾロはそれだけ言って歩き始める。私のことを見たんだから言うことがあるでしょ。髪型可愛いとか、ミニスカートと靴が似合うとか。なのに全く言ってくれそうにない。


「ゾロ〜」

「あ、歩くの速かったか?」

「違うけどさ…」


話し掛けても、私のことについては全くの無反応。それに私の手が空いてるよ。ゾロの温もりを感じたいって言ってるよ。


「手…」

「は?」


“手を繋ぎたい”それってワガママなのかな?

だけどやっぱり繋ぎたいな。大好きなゾロと。


「手繋ご!」


そう言うとゾロはそっと私と手を繋いだ。


「そんなこと早く言えばよかったじゃねェか」


なんてゾロは言った。それから少し通りを歩いた。もちろん手を繋ぎながら。


「くしゅん!」


風が吹いたので全身に寒気がし、くしゃみをした。


「そんな格好してっからだろ。名前は風邪引きやすいんだから気をつけろよ」


せっかくゾロのためにオシャレしたのに、そんなこと言われるなんて。ゾロが私のことを心配してくれてるのは分かってるけど、可愛いって言われたかった、なんて思いながら首を何度か縦に振った。


「寒かったら言えよ?」

「うん…」


するとゾロは突然私の腕を引っ張って、抱きしめるように引き寄せられた。


「え!?」

「轢かれる」


全然気が付かなかった。後ろから自転車が来てたなんて。


「ごめんね」

「やっぱり名前はおれが守ってやらねェとダメだな」


ポン、と私の頭に手を置き、優しく撫でた。

“可愛い”なんかより、ずっと嬉しい言葉をもらえた気がした。さすが、私の王子様。



ワールドイズマイン

ワールドイズマイン/初音ミク


▽20111203