「ゾロと船番なんて退屈ー」

「そうだな」

「ロビンなら話し相手になってくれたし、サンジなら美味しいお茶を淹れてくれた」

「……そうだなァ」


ぽかぽか、そよそよ。

天気の良い日に甲板でゾロと船番。ごろごろする私に、頭の後ろで手を組むゾロ。

在り来たりな光景だけど私の気分は最悪。だって私は満足してないもん。なんでゾロとなの、って。


「やだ」

「何が」

「ゾロと一緒なんて」

「しゃァねえだろ」

「やだったらやだ」

「っだー!さっきからうるせェ!」


てめえがじゃんけんで負けたから悪いんだろーが!

そう叫ぶゾロにむっとする。好きで負けたんじゃないよ。船番になりたかった訳じゃないもん。


「……ゾロはいつも何してるの?」

「あ?」

「船番、退屈じゃない?」


本来はみんなと島を探索したり買い物したり、楽しいことだらけの停泊。

私は船番=退屈って意味しか持ってなかったけど……ゾロはいつも船番してるよね。

何か楽しいこと知ってるのかなって。


「……寝てる」

「それだけ?」

「あと……トレーニング」

「…」

「オイ、自分で聞いといて返事は無しか」


少しでも期待した私がバカだったみたい。

ゾロがそれ以外に何かしてたら気味が悪いよ。お茶淹れたりとかさ。


「あーあ、寝ようかな」


パッと立ち上がると景色が一変。今まで甲板の緑とゾロの緑しか見えなかったのに視界いっぱいに島の風景が広がった。

空は澄んでるし、島は賑やかで楽しそう。


「……行ってこいよ」

「え?」

「そんなに行きてェなら行ってこいって、別に俺一人で変わんねーから」


気怠けに私の目線と一緒になったゾロは展望台へと向かい出す。

頭をボサボサ掻きながら。腹巻きに手を突っ込んで。

その背中に何故かむかっときた私は、つい、思ってもない言葉を言ってしまったんだ。


「っ、いいよ別に!」

「は?」

「私ここで寝るから!」


本当は島に行きたい。みんなと楽しく遊びたい。

だけど、どうしてかな。

この時間を終わりにしたくないって思うの。


「ハァ……」


すとん、腰を元いた場所に下ろしてゾロは大きな溜め息を一つ。

その瞬間、顔が緩んじゃうのはきっと。


「お前がここにいたら危ねェしな」

「私なら一撃でやっつけるけどね」

「一撃でやられるの間違いだろ」


あまのじゃくな自分の気持ちにやっと気付いてしまったから。



まだ話そうよ

(本当の本当はゾロと一緒にいたかっただけ)


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◎ヒナタさんより/1万打記念

うおぉぉぉっ!なんて素敵なお話><想像してたのとバッチリです!こんなサイトの1万打を祝って下さり、本当にありがとうございました(^O^)

▽20110615