あ、まただ。また机に落書きしてる奴がいる。

音楽の授業は移動教室なので、いろんな人がこの席に座る。だから、たまに落書きがあったりするのだ。私は机に書かれた落書きを消しゴムで消していくと、一つの落書きが目に入った。


【何で落書き消すんだよ。真面目な奴だな】


その落書きを見た私は怒りが込み上げてくる。シャーペンを握り締め、返事を書く。


【みんなが使うからよ】


そう机に書いてから気が付く。私も落書きしているということを。

あーあ、やっちゃった。まぁ、少しならいっか。

私はそう思い、落書きを消さずに音楽の授業を終えた。次の週、私は返事があるのかどうか少し緊張しながら音楽室へ向かった。ドキドキしながら自分の机を見ると返事が来ていた。


【もしかして女の子?俺、てっきり真面目そうな眼鏡かけた男が消してんのかと思った。あ、良かったら今度俺と遊ばない?】


何だコイツ。机の落書きでナンパしてるぞ。

フフッと笑って、返事を書く。


【こんなところでナンパしないで下さい(笑)】


それから私達の机でのやり取りは続いた。


【ちぇー、じゃ今度会ってナンパする】

【しないでよ。ってゆーか、私が誰だか知らないでしょ?】

【知ってるよ、誰だか】

【嘘ー!?ストーカー!?私も貴方が誰だか知りたい】

【自分で探しなよ】


その伝言を見てから、私は相手が誰なのかを探している。すると、ある日あの言葉が耳に入って来た。


「あ、良かったら今度俺と遊ばない?」


ん?何だか聞いたことがあるような言葉…。

声の主へ目線を向けると「あ!」と言われる。


「やっと見つけてくれた?」

「うん。やっと見つけた。名前は……?」

「紀田正臣」

「よろしく」


私はニコッと彼に笑った。




▽20110417