真っ白い純白のドレスに身を包んでいる今日。突然の結婚となってしまったのに友達はほとんど皆来てくれた。ある人を除いては。

やっぱり、来てくれないか……。

辺りを見回してもあの人は居ないと思った途端、「やあ」というあの人の声が聞こえた。


「臨也……?」


振り返るとそこには、高校生の時に好きだったあの人、折原臨也が居た。


「来てくれないかと思った……」

「仕事が忙しくてね。そんなに居られないけど」

「ううん。嬉しい」


臨也に会ってしまった私の心は、高校生の時の心に戻っていく。戻ってはいけないのに。これから新しい人と、新しい未来へ歩み始めるはずなのに。


「名前は高校生の時、俺のことが好きだったよね」

「…………うん。別に告白した訳じゃないのによく分かったね。でも今は違うよ」


嘘。高校生の時じゃなくて、本当は今も好き。この結婚は親同士が決めた勝手な結婚。正直私はあんな人と結婚したくなかった。けど、親を逆らうことは出来なくて。


「俺は今でも名前が好きだけどね」

「え?」

「結婚なんてされたら困る」


臨也はそう言うと、私の手を掴み走り出す。止まらなきゃいけないのに私の足は、心は、臨也に向かって走り出す。


「お母さん、お父さん!ごめんなさい!私は臨也が好き!」


私は母親と父親に向かってそう言い残して、臨也に連れられ教会を出た。


君の幸せを盗みに来たよ


▽20110319