オレは、もうすぐ教団を出る。じじいからの命令だ。出たくなくても行かなくちゃならない。居心地の良かった、この教団から。


「ラビ、どうしたの?」


その一言で我に返ったオレの前には、心配そうにオレを見る名前が居た。

オレは……大好きな名前も置いて行くんだ…。

そう、目の前にいる好きだった彼女にも何も言わずに出て行くんだ。


「ラビ……元気無いね。何かあったんでしょ?」

「ん……あぁ」

「何?言ってみなよ」


じじいには誰にも言うなと言われている。だから、言ってはいけない。


「何でもないさよ」

「そーお?」


沈黙が続く。本当は言っておきたかった。オレが居なくなることを。そして、君を好きだと言うことを。


「あのさ……」

「ん?なぁに?」

「オレさ、お前のことが……」


駄目だ。言えない。言ったら終わりだ。その二つの事を言えない悲しさに襲われる。


「ラビ!ラビは笑顔が1番だよ。だから、笑って!」


彼女は満面の笑みでそう言った。その笑顔が愛しくて、愛しくて、オレはさっきまで言えなかった事を話そうと決めた。


「オレ、この教団から出ていくんさ」

「え?嘘……でしょ?」


苦笑いをしながら問い掛ける名前。


「ラビが居なくなるなんて嫌だよ!!」


そう言いながら泣く彼女。さっきの笑顔は消えてしまった。


「ごめんさ……」

「ねぇ、ラビ?」


ごめん、と謝ると名前は何か決心したように涙を拭いてこう言った。


「そんな顔しないでよ!さっき言ったでしょ、笑ってって!」


名前はぎこちなくだが笑った。きっと涙を堪えながら笑ったんだ。


「分かったさ……。やっぱりオレ、お前のそういうところ好きさ」

「え!?」


伝えておきたかった事、二つ。ちゃんと言えたかな。


君の笑顔が眩しくて

▽20110306