4.せんせーと


 今日、夕飯食べたあとおれの部屋にこい。
 そんなメールを送って携帯を放置し、透は篤実を待っていた。
 インターホンが鳴り、玄関まで足を運び、扉をあければ仏頂面のおとこがそこにはいた。
「てめー、なんの用があっておれを呼び出したりした」
「まあ、とりあえず入れ」
 チッ、と舌打ちしつつも篤実はあとをついてくる。
 リビングにてソファーに座るよう促せば、素直にそこに腰をおろしたおとこに「はやく事情を説明しろ」とでも言いたげな視線を向けられた。せっかちだな、とおもいつつ透はそれに応えてやる。
「今からセフレのひとりがくるから、クローゼットの中に入ってそれ見てろ」
「…………はあ?」
 心の底から呆れた、というような声を発され、透もばかにしたように「今度うまいやつとのセックス見せてやるって言っただろ」と返す。
「あれ、マジだったのかよ……。おまえには羞恥心てもんがねーのか」
「ねーわけねーだろ。ただ、今日の相手のテクはおまえにとって一見の価値があるとおもうから呼んでやったんだよ」
 透がここまで言うとは、と驚いている篤実に茶を振る舞っている暇もなく、二度目の呼び鈴が部屋に響いた。
「――きた。おい、はやくクローゼットん中入れ」
「は、ちょ、おい……っ」
 慌てる篤実のことなど放って、やってきた人物を出迎えにいく。
 ドアをあけ、透は笑みを浮かべた。
「待ってたぜ」
「おー」
 こどものように来訪者――政貴の手をひき、リビングに戻ってソファーにもう待ちきれない、といったふうに押し倒す。
「せんせ……、はやく、さわって……」
 事実、もう我慢できなかった。期待に期待を重ねた体はすでに火照っていて、刺激を求めはしたなく疼いている。
「なんだ、最近してなかったのか?」
「んっ、は、禁欲、してた……」
 部屋着であるシャツの上から胸の突起をくり、と撫でられあまい吐息が零れた。
「めずらしいな」
「せんせと、するの、久々だから……」
 たくさんきもちよくなりたくて、と正直に告げれば、いいこだ、と言わんばかりに乳首を摘ままれる。
「ぁぅっ、は、ぁ……ッ、あ、や、直接、さわれ、よぉ……」
「ほんと、おまえは堪え性ねーな」
 くく、と笑いながら透がねだった通り、政貴は服のボタンを外してじかに肌にふれてくれた。
 おとこに愛撫されるたび、ふだんの自分からは想像もつかないほど高い声が喉を突いて飛び出す。
「ぁ、あン、せんせ、下も、下も、して……」
 いつもの口調が呆気なく崩れ、媚びる雌になりさがってしまうも、どうにもできない。
 徐々に胸を弄る指つきが明確に快感を与えるものへと変化していき、透はたまらず腰をくねらせた。
「ちったあ我慢しろって」
「ぁ、ぁ、だって……っ、せんせーのでっけぇチンポで、はやく、ぐちゃぐちゃにされてえの……ッ」
「今日はおまえが満足するまでつきあってやれるから、そんな焦んな」
「は、ぁん……、」
 くに、と突起を嬲られるとものたりないのにきもちよくて、逆らう気が削がれてしまう。相手が政貴でなければ強引に挿入にこぎつけることもできたが、今自分を煽っているのは本人だ。余裕なんてものは、これっぽっちもない。
「お、いい感じに膨れてきたじゃねーか」
 硬くなり、ぷっくりしたそれはまるでおんなの乳首のようで、透はかっと頬を染める。
 ここをこんなにもてあそぶことをゆるしているのは政貴だけなのだが、彼があまりにもいじくるせいで最近は服にこすれるだけで反応してしまいそうになっていた。けれど、そんなことを言ってやめさせるわけにもいかないし、政貴がやめてくれるともおもえない。むしろ、面白いことになってんな、と余計にいじめられるに違いなかった。
 ここはおとなしく黙っておこうと口を噤み、なにも考えず与えられる悦に酔いしれることにした。
「は、ぁ、ぁぅ……、あ、あ、んん、」
 強弱をつけて赤い果実のようになったそれをこねられ、嬌声がとまらなくなる。頭の中がどろどろにとかされていく。
 もっと強い快感がほしくなって下半身を政貴のそれにすりつけ、腰を振った。
「っひ、ん、はぁ……っ、せん、せ……」
「は、えっろい顔」
 べろりと唇を舐められ、じんっと脳が痺れた。はやく、という想いを抑え切れない。邪魔くさいジーンズと下着を脱ぎ捨て、濡れた瞳で政貴の目を覗き込み、懇願する。
「おねが、こっちも、して、してくれ……ッ」
 すると、仕方ねえなあと呟き、政貴が下半身に掌を這わせてきた。
「めっちゃものほしそうにしてんな」
 つん、と蕾をつつかれると、そこは太いものを求めてひくひくと自我を持った生き物のように蠢く。
「やっ、あぁ……」
 まだ濡らされていない後孔に中指が慎重にさし込まれ、乾いた痛みを覚えたが、透はそのまま政貴の好きにさせた。彼が、狂いそうなほどの快感を与えてくることはあっても、苦痛を与えてくることはないと知っているからだ。
「ぁ、あぅ、はぁ……ッ、せんせ、はやく、いれて、なか、めちゃくちゃに……っ、かきまわせ、よぉっ」
 求めれば求めるほど焦らされて、おかしくなってしまいそうだ。
 頭がぼうっとして、体が熱くてたまらなくなって、焦れったい快楽にひたすら啼くだけの人形と化した透を、それでもいじめ続けてからようやく、政貴は一本の指をアナルへと埋め込んだ。
 先走りがひどいことになっており、尻までつたって穴を濡らしている。潤滑剤などなくともこのまま馴らすことができてしまうほどだった。
「は、ひ、ぁ、あん、もっと、して、ぁ、ぁ、たりな、たりない、ッ」
 こんなことを言えばまた、ことさらゆっくり事を運ばれてしまうかもしれない、と不安が脳裏をよぎったのは一瞬。次の瞬間、強烈な愉悦に思考が支配された。
「――っひ! ぃあ、あ! あーッ!」
 唐突に流れ込んできた悦の波に目を見ひらき、必死に声をあげる。前立腺にふれられたのだと気づくのに時間がかかった。焦らされたぶん、襲いかかってくる快感は凄まじい。今にも達してしまいそうになるのをなんとかこらえ、愛撫を全身で享受する。
 きもちいい。どうしようもなく。
 政貴とのセックスは、ほかのだれとしても味わうことのできないものを感じることのできる、透にとってとくべつな行為だった。
「い、いく、ぁ、も、むり、せんせ、おれ、いく、いっちゃ、ぁ、ぁ、」
 政貴の肩をぎゅうっと掴んで限界を訴えると、「好きにイけよ」としこりをぐりぐり嬲られた。
「あ、あぁッ、あ! や、いく、いっ……! ひ、あぁあ!」
 ばちん、となにかが弾けるような感覚に体が痙攣したその刹那、透は絶頂してしまっていた。




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