2.理解できない


 じゅる、と愛液をすすられひくんと体を痙攣させると、「どうだった?」と訊ねられた。
 あ、ほんとに聞くんだ、とぼんやり頭の片隅でおもいつつ、「きもちよかった……」とうっとり零す。しかし、そんなことが聞きたかったわけではないのだろう政貴は、「そうじゃなくて」と呆れたようなため息をついた。
「あ……、ん、なんか、すごかった。アナルのときは必ずあった最初の変な感じもなくて、イくときも……、ドライでイくみたいな、快感に満たされて……」
 働かない脳みそをなんとか駆使し、感想を述べれば「やっぱりマンコ以外の何物でもねーな、こりゃ」とおとこが呟く。
「……っ、せんせ、」
 下腹がじくじくして、我慢できずに腰を突き出して透は挿入をねだった。
「あ、ぁ……ッ、おく、ほしい、マンコ、たりねぇよぉ……、せんせぇのデカチンポで、して、なか、ずぽずぽ、って……、」
 尻を掴み、くい、とそれを外側にひっぱれば下の唇がいやらしくひらかれ、雄を誘うようにつう、と蜜が垂れる。
「んー? いいのかよ。さっきはあんなにいやがってたのに」
「ぁっぁっ、だ、って、も、がまん……できな、ぁ……ッ」
 怖くないわけではなかった。けれど、それ以上にきもちよくなりたくて仕方なかった。
「おねがい、せんせえっ」
「……後悔すんなよ?」
 うん、とこくこく頷くと、焦らすつもりは毛頭なかったのか、すぐにペニスが押し込まれた。――そこで、気づく。
「あ、ァ、なん、で……ッ、あ、ゴム、してな……」
「いっつもいらねーつってチンポねだってくんのはおまえだろ」
「あッ、は、や、ぬけ、ばか、いまは、マンコなんだからっ、ナマでいいわけ、っねえだろ!」
 政貴にこんな口をきくのは滅多にないことだが、そんなことを気にしていられる状況ではない。こんな、なにが起こるか予想できない体に避妊具なしで挿入できるおとこの思考が理解できなかった。自分ならば絶対、セックスを自体を拒むのに。
「なに、ガキができちまうって?」
「ぁ、あぁ……ッ、や、ぁ、ぬいて、だめ、あー……ッ! ゃ、ほんとに、できちまったら、どうすんだよぉ……っ」
 恐怖と快感がないまぜになって透を襲う。
 しょうがねえなあ、と政貴がぼやく。ぬるーっとゆっくり出ていこうとする陰茎の動きに抜いてくれるんだ、と安堵しかけたとき、それを一気に奥まではめ込まれた。
「――ッひ! あ、あ、あーっ、んぁ、あぁッ、せんせ、ひ、っで……ぇ、」
「めんどくせーことごちゃごちゃ考えてんな。今はおまえは、ただよがってるだけでいいんだよ」
 ぐっと腰を掴み、中を蹂躙する肉棒に意識がすべて奪われる。
 きもちいい。よすぎて、おかしくなりそうだった。
「ん、んんッ、は、ぁ、あん、あッ、」
 リズミカルに突きあげられ、感じていることを隠せない、そんな声が洩れてしまう。まだ探るような動きなのに、悦がどばどば溢れて脳を満たした。性感帯を見つけられたらどうなってしまうのか――。怖いが、それよりも期待が勝ってしまう。しかし心と体は別物で、透の下半身は得体の知れない感覚から逃げようとしていた。
「おい、逃げんな――っ、と」
「あぁあん! っあ、あ! ぁ、そこ、そこぉ……ッ、だめ、だめ、だってぇ!」
 ぐりいっと音がしそうなほどに抉られた場所は感じるポイントのひとつだったようで、凄まじい愉悦が足元から這いあがってきて、あっという間に全身へといき渡った。
 涎を飲み込むこともできずにひんひん泣くも、政貴はその凶器のような雄で容赦なく襞を掻きわけ、的確に「そこ」を穿ってくる。たぶん、ここが先ほど指で弄られたGスポットなのだろう。
「ぁッ、らめ、こんなの……っ、ぁ、まんこ、も、しないで、ぁ、らめ、おかし、なっちゃ、」
「やめろって……、今までにないくらいとろけた顔で言われてもなあ」
 楽しそうに笑って透の懇願を無視し、おとこは蜜壷を犯した。
 絶頂がすぐそこまで迫ってきている。でも、たえる方法がわからない。いく、いく、とうわごとのように繰り返すだけの機械になり、透はそればかりを口にして身を震わせた。
「ひ――ッ、いく、ぁ、まんこ、すごい、いっちゃう、あ、ぁ、おれ、まんこおかされて、めすいき、しちゃぅう……!」
 視界が白んだ瞬間、ぷしゃあと鈴口から液体が噴射された。がくがく痙攣しているにもかかわらず、政貴がそのままピストンを続けるものだから、ペニスがびんびんと跳ねてしぶきがあたりに散らばった。
「おー、すっげ、潮吹いてんじゃん」
「あっ、あ? ひ……、なに、なにこれ、あぁあ……! とま、とまんな、あぁ、んんッ!」
「やっぱ構造はマンコよりなのか? まじで子宮までありそうだな」
 ぐっと深いところまで埋められ、「これ以上入ってこないでくれ」と息も絶え絶えに頼んだが、政貴はそれを華麗にスルーしていきどまりまで楔を打ち込んだ。すると、こつん、と先端がなにかに接触したのが透にもわかった。
「おいおい、これ、子宮じゃねーの? こりゃあ孕んじまうかもなあ」
「やあぁッ! ぁ、あ、やめ、らめ、ぬいて、ぬいてぇっ」
「ばっか、今さらやめるわけねえだろ」
 ほんとうに孕んでしまうかもしれないというのに、政貴はまったく意に介さずおそらく子宮の入口であるそこを何度もいじめてきた。その途端、ずっと極まっているような感覚に支配され、透はなにも考えられなくなり、ただ喘ぐことしかできなくなった。
「あッあ、あーッ! ひ、ぃい、まんこ、すご、すごいぃっ、またぁ、いく、いってる、ぁ、あーっ、せんせぇ、おれ、きもちい、まんこ、きもちいい、よぉ!」
 逃がすまいと、ぎゅっと脚を腰に絡みつける。きゅうきゅうと膣穴で剛直をしめつけると、政貴が色っぽく呻くのがたまらなくて、タイミングを合わせて腰も振る。
「は……、なんだよ、結局、マンコに種つけ、してほしいんじゃねーか」
 なにを言われているのか、聞こえているのにその言葉の意味が理解できない。唇から零れ出る声はいつもより何倍も媚びた色をしていて、甲高い。
 出すぞ、と囁かれ、がくがく頷いた。透の体は、こんなときにも、どこまでも貪欲だった。
「ひ、は、ぁ、あ! あん、っも、ぁ、やば、ぁ、へん、へんなの、くる、ぁ、ぁ、も、らめ、らめぇッ、まんこ、いくっ、あぁあーッ!」
 脳内でばちばちと星がまたたき、凄絶な快感に全身が戦慄く。そのすぐあとに政貴も限界がきて――。
「っ、おら、孕め、よっ!」
「あっ、あぁ!? ぁ、あーッ! きちゃ、しきゅうに、せーし、はいって……、やぁ……っ」
 おとこは透の中に、熱い飛沫をぶちまけたのだった。




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