1.たすけて「    」


 ここ一週間、透はだれからの連絡も無視して部屋にひきこもっていた。しかし、いくら授業免除という特権を持っていても生徒会室にすらいっていないので、いい加減出てこいと怒られるのも当然のことで。ついに、彼らが部屋までやってきた。
 ピンポンピンポンとインターホンを連打され、うるせえ! と怒鳴って扉をあけたくなったがそれもできない。とにかく今はひとに会いたくないのだ。だが、さすがにおかしいと感じたのか寮長を呼びマスターキーで彼らは透の部屋へと入ってきた。
「な、なにこれ」
 唖然と呟いたのは副会長の花倉錦(はなくらにしき)。リビングの隅でシーツを被って小さくなっていた透はそれを耳にして、「出てけ」と掠れた声で言い放った。
「体調が悪かったんですか? あなたはいつもそうやってむりをして……」
 心配しているのか説教をしているのかわからない錦の言葉に、返事を返せる余裕が今の透にはない。
 なにかを察した幸人が「そっとしといてあげようよ。……会長、先生呼んでこようか?」と訊ねてきたが、肩を跳ねさせるだけでイエスもノーも示せなかった。
 ――三十分後、息を切らせてやってきた政貴に、透の涙腺がゆっくりと緩んでいった。
「おい、宮城、なにがあった?」
 政貴にだけは知られたくないとおもいつつも、透が「それ」を吐き出せる相手もこのおとこ以外にはおらず、矛盾した想いに息が浅くなる。
 はっ、はっと今にも過呼吸になりそうな呼吸を繰り返していると、「だいじょうぶだから」とやさしく抱きしめ、背中をさすられた。
「ぜっ、たい、きらいに……、なら、ない?」
「きらいに? おまえ、なんかやばいことしたのか? まあ、できる範囲でならもみ消してやるけど……」
 もみ消す、という台詞に笑いがこみあげ、ふは、と大きく息を吐き、透は覚悟を決めて着ていたスウェットの下を下着ごとおろした。
「なに……」
 戸惑う政貴に、脚をぱかりとひらいて見せる。何度も抱き合った仲だ。どちらも今さら慌てるなんてこともない。おとこは初め、どうすればいいのかわからずわずかに視線を逸らして気まずげにしていたが、透が震えた声で「……見ろ」と言えば目線が秘部に注がれた。そして。
「おまえ、これ、どうした」
 政貴は、驚愕した。――むりもない。透だって、当事者でなければこんな非現実的なことが起きることがあるなんて、信じなかった。
「わかんね……。ちょうど一週間前の朝、起きたらこうなってて……。こんなん、だれにも……、親にだって言えねーし、とにかくなおるまでひとに会わないようにしなきゃって、おもって」
 くい、と肉のない尻を左右に割れば、くぱ……とひらくのはペニスの生え際から繋がるようにして存在する――女性器によく似たそれ。――そう、透の陰茎と後孔のあいだには、いわゆる膣と呼ばれるものができていたのだ。
「……ちょっと、さわってみてもいいか。つーか自分では弄ってみたのか?」
「確認したら負けな気がしてさわってねえ……。でも、せんせ、なら、いい、よ」
 恐怖に声がうわずる。しかしそこには期待の色も混じってしまっていて、こんなときまではしたないことを考えてしまう脳が憎らしかった。
 陰唇をぴろぴろと指先で弾き、「おお、本物だ」と感心する政貴に羞恥心が爆発しそうだった。だが、透のことなどおかまいなしにその行為はエスカレートしていく。
「んー? クリはねえのな。チンポがクリの代わりってことか? 尿道もねえな」
「や、ぁ……っ」
 セックスのときに発するようなあまい喘ぎが漏れてしまい、咄嗟に顔を腕で覆った。それがいけなかったのか、おとこは確認の意味合いが強かった動きを性的なものに変え、指を動かしてきた。
「おお、すげえ。マン汁出てきたぞ。穴ん中はどうなってんのか……」
「あッあッ、だめぇ、やめろ、よぉ……!」
 透のあってないような拒絶を華麗に無視し、政貴はひとさし指を埋め込んでしまった。
「こりゃ、正真正銘のマンコだな。はは、でもこれは処女のマンコじゃねーわ。まさか、子宮もあんのか?」
「あーッ! や、いきなり、いや……ぁっ」
 そこが濡れているのをいいことに、おとこはぐいぐい指を進めてくる。アナルを馴らす際には必ずつきまとった最初に感じる異物感も、ない。ほんとうにおんなのあそこなんだ、と実感してしまうと、ショックと快感に同時に襲われ、目から涙が溢れた。
「せ、せんせ、おれ、なおる? このまま、おとこでもおんなでもない、中途半端な体のままとか……、ぜってぇいやなんだけど……」
「……わっかんねえけど、」
 とりあえず、セックスするか。
 そう続いた台詞に、透はぽかんとした。
「は……、はあ!? や、やだよ! こんな、きしょい体でとか、したくねぇ!」
「でもなあ、成人向けの漫画とかでよくあるだろ? 異変の起きた体がセックスしたあとなおってた、みたいな描写」
「そんなん知らねーし、セックスしてなおるとか完全にファンタジーだろ!」
「いや、チンコとマンコ両方ある時点でおまえにファンタジーを否定する資格ねーから。つーかおれ的にはわりと燃えるんだけど? その体 」
 透が政貴に口で勝てるはずもなく、なだめ、言いくるめられて結局セックスをすることになってしまった。
 寝室に移動し、互いに全裸になればさっそく政貴が動いた。
「そんじゃ、まずはマンコで一回イってみろ。いつもと違ったか聞くからな、ちゃんと集中してろよ」
 まるで授業のようだとおもいつつ、素直に頷く。すると、おとこの長い舌と指が陰部を愛撫し始めた。
 ――戸惑いを、隠せなかった。
「ひぃッ! や、あッ、ぁ、あーッ、指マン、そんな、したら、だめ、だって、や、ぁあ、」
 すこし弄られただけで蜜壷はどろどろとぬめった体液を分泌し、まるで、はやく精液がほしいと言わんばかりに奥がじんっと疼いた。
 ぐちゅぐちゅ、音もひどい。
 一本だったそれが二本、三本と増えていくのはあっという間で、Gスポットと呼ばれている部位を的確に指の腹でこすられれば強烈な愉悦に脳が支配される。
 いや、いや、と首を振っても当然、解放してもらえるはずがなく。
「あ、あぁッ、ひ、は、なん、で、きもちい、マンコ、きもちい、ッよぉ、――いっちゃ、ぁ、いくぅ……!」
 卑猥な台詞を口にし、透は呆気なく達してしまったのだった。



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