5.せんせーと2


「……っ、ふ、ぁ、は……っ、ひ、ぁあ……、」
 ぬちゅりと音をたてて指が蕾から出ていく。
 いやがる自分をむりやり犯して凄絶な快楽で満たしてほしいとマゾみたいなことをおもってしまったが、政貴はそんなことはしなかった。むしろ、焦らすようにゆっくり服を脱いでおり、泣きたくなる。
「は、ぁ、も、や……、せんせ、せんせぇ……、」
 下半身にはまだ邪魔くさい布が残っていたが、待ち切れずに透はそれに手をかけた。そして、前を寛げ、反応している陰茎をとり出し自身の尻にすりつける。
「これ、いれろよっ、はやく、ちんぽ、ほしいんだって……!」
「おい、まだコンドームつけてねえぞ」
「あッあッ、や、も、いらな、せんせの、ナマでいれて、おれのケツマンコのおくに、いっぱいせーしちょうだい……ッ」
 この学園の生徒なら煽られてくれること間違いなしの台詞にも、政貴は余裕げに「淫乱め」と笑うばかりだ。
 つらくてたまらなくて熱い涙が零れ、お願い、とふたたび懇願しかけたそのとき、全身に意識が飛びそうなほどの衝撃が走った。
「――ッあぁあ! あ、あ! ひぃ、ッん、ぁー……っ!」
 とくとく、精液が鈴口から溢れて下へと流れていく。政貴が今だ、とでもいうように剛直で穿ってきて、たて続けに極まってしまったことを恥じている暇はなかった。さんざん焦らしてきたのはなんだったのかと問いつめたくなるような激しさで犯され、もう達しているのかどうかもよくわからないまま、透は嬌声をあげてよがった。
「ぁ、ぁ、あっ、んー……! ふ、ぁ、は、ぁあ……ッ、」
「は、しまる……」
 根本までずっぷり埋め込まれた熱塊を自らの意思とは関係なしにきゅううとしめつけると、政貴が色っぽい声を耳元で発した。それにすら感じてしまい、体がびくびく震える。
「あッ、ぁ、おくに……っ、きて、きてる、ぁ、あぁン……、ふか、い……ッ」
 ごりゅりゅ、と最奥を抉るような腰使いでピストンを繰り返され、透の脳内は許容できないほどの愉悦に満たされた。
 恐ろしくて、きもちよくなれるタイミングに合わせて腰を動かすことができないのだが、そんなことは政貴にとってはたいした問題にならない。太くて硬い、まさしく肉棒と呼ぶに相応しいそれは透の弱点ともいえる箇所を的確に突きあげてくる。
 与えられる悽絶な快感に、先端からとめどなく先走りが溢れ、繋がっている部分までもがぐちゃぐちゃに濡れていた。
「はは、まじで自分から濡れてるみてえ」
「ぁ、……ん、は、ぁ、や……、ばかに、なる……ッ、ぁ、あ! せんせ、けつまんこ、きもちい、きもちいい……!」
 まともな受け答えは、すでにできなくなっていた。卑猥な台詞を口にして政貴に首に縋りつけば、結合がより深くなって悲鳴が喉から飛び出す。
 ぐじゅぐじゅ、ずぶずぶ、耳を塞ぎたくなるような淫猥な音があたりに響く。それすらも快楽を増長させる材料にしかならず、透はひたすら啼いた。
「あッ、あーッ! ひ、ぃく、また、いく、せんせぇっ、ちんこ、ちんこさわって、い? しゃせ、したい、ぁ、ぁ、も、いくぅ……ッ!」
「だめだ。おんなみたいに、マンコだけでイってみせろ。そしたら……ご褒美、やるよ」
 ごほうび、とうっとり呟き、透はこどものようにこくんとうなずいた。
 フィニッシュに向けて律動はどんどん激しくなっていき、それに伴って悦が強く大きくなってくる。意味のなさない母音を唇から零しながら、透の淫穴はペニスを美味そうにほおばり、今か今かとその瞬間を待っていた。
「は、ぁあ、あ、あん、も、くる、ぁ、マンコに、なっちゃ、あぁ、おれのアナル、せんせーのせーしだされる、まんこに、なっちゃ、う、」
「――ッ、宮城……、」
 中を犯しているものがぐぐっと膨れあがったかとおもうと、視界の隅で星が弾けた。絶頂したことを自覚する前に――、それは、きた。
「あぁあ……! くる、ぁ、あ! せんせの、せーしがぁ……ッ! おれの、まんこに、きちゃう……! あッあッ、やぁあーッ!」
 どぷどぷ、熱い飛沫が奥にたたきつけられ、全身がびくんびくんと跳ねた。ぐり、と塗りつけるようにして亀頭をこすりつけられ、あまりの充足感に目から滴がぽろぽろとつたった。
「ぁ……、は……、ぁん……、せん、せ……」
「……ご褒美、やるよ」
 中出しが褒美だと考えていた透は、政貴の言葉にまだぼんやりとしていて回復していない思考を必死に働かせようとした。しかし、そんなことをするよりもおとこが褒美を与えるほうがはやかった。
「ん……っ」
 ――突如、唇をやさしく吸われた。つ、つ、とわれめを舌でなぞられ、誘われるがままに口をひらくも口づけは深くなることなく、行為そのものを味わうようなキスが続く。それだけなのに、とてつもなくきもちがいい。心が満たされる。
 これは確かに褒美だな、とようやく帰ってきた頭の中の冷静な部分がそうおもうも、すぐにそれもどろどろにとかされてしまう。
「は、ぁあ……、ん、ん、ぁ……」
 唇を合わせていると、じわじわ熱欲が湧きあがってくる。先ほど、あんなに乱れてみせたというのにこの体は貪欲で、際限を知らない。緩やかに勃ちあがってきたそれに、政貴は笑わなかった。――なぜなら、彼のものも硬度をとり戻しつつあったからだ。
「ぁ、せんせ……、もっと、して……、泡立つくらい、おれのマンコに射精して、奥突いて……」
 俺様生徒会長などというふだんの透の姿はここにはなかった。あるのは、雄を求めてはしたなく欲情する、雌になりさがった姿だけ。
「……いいこだな、宮城。素直で従順なやつは、嫌いじゃないぜ」
 軽く突きあげられ、あん、とあまい声で啼けば第二ラウンドが始まる。
 篤実のことなどすっかり忘れてしまって、透は久々の政貴とのセックスにおもう存分惑溺した。


 行為を始めてから三時間後、体力的な問題ではなく、受けとめ切れないほどの快感にたえきれず失神した透は、知らない。
 ――クローゼットの中で篤実が息をひそめてふたりの交わりを見ていたことに政貴が気づいていたことも。彼が、篤実を部屋から追い出したということも。
「一応忠告しといてやるけど、宮城には惚れないほうがいいぞ。こいつ、おれのことしか見えてねーから」
 そんな台詞を政貴が口にしていたことだって――、透は知らない。
 けれど、それでいいのだ。
 政貴の左手の薬指には、既婚者であることを表すリングがはめられている。長期休暇のとき以外は外泊することがゆるされないこの学園で、彼のようなおとこが過ちを犯さないはずがないと、失礼ながら透はそうおもっていた。そして、予想はあたっていた。
 中等部にいたとき、とある事件を経て始まったこの関係。透は自分の立場を理解し、わきまえなければ、と溢れそうな想いにふたをした。
 セックスフレンド。政貴との間柄はそれで、じゅうぶんすぎるほどだった。この学園を出るまでの期間限定の関係。それでよかったのに――、透のまったく想像もしていなかった方向に、未来は動いていくのだった。



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