陰茎と乳首の両方を嬲られ、強烈な悦に体内を支配される。
「要さま……っ、」
 咄嗟にすぐそばにあった腕を掴めば、やさしく唇を吸われる。すこしだけ得体の知れない快感に対する恐怖が和らぐも、依然として真理は体を固くし怯えていた。
 ゆっくり、ゆっくり、行為を先に進めていく要は理性を失って乱暴になるようなことはなかったが、どれだけ時間をかけることになってもセックスを中断させるつもりは毛頭ないらしい。真理が与えられる刺激にくったりしたころ、彼は本格的に繋がる準備を始めたのだ。
「備えあれば憂いなしって、こういうことを言うんだな」
 いつかのときのために用意しておいて心底よかった、とうなずきつつローションをとり出したおとこにぼっと赤面する。
 あたためてからそれを尻に塗りつけられ、あんなところにほんとうに入るのだろうかと不安になっていると要が安心させるように笑みを浮かべた。
「できる限り痛くないようにするから」
「は、はい……」
 これから起こることを直視するには真理には覚悟がたりなかったので、ぎゅっと目を瞑ってしまうことにした。すると、視界を闇で覆った途端につるりと指先がアナルへとすべり込んできた。
 一本目は、呆気なく中へと侵入を果たしてしまった。もしかして素質があったのだろうか、となんとなくショックを受けながらも異物感はあったので、健気にたえるしかなかった。だが、すぐに要は真理の感じるポイントを探しあて、そこを重点的に弄った。きもちよくてわけがわからなくなるまでひたすらそこばかり嬲られ、真理の息はもう絶え絶えだ。
 二本目、三本目が順調に追加され、もう、いっそ痛いほうがましだとおもうくらいにさんざん蕾を指で犯されたのち、ようやく要がバスローブを脱ぎ捨てそそり勃った肉棒を扱きながら、熱のこもった目で見つめてきた。
「真理……、いいか」
「ぁ……、は、はい……」
 ちいさく肯定すると、もう待てないと言わんばかりに要が楔を後孔に押しあてる。そして、挿入を開始した。
「あッ、あー……っ、」
 くるしさはあったが、痛くはなかった。長いあいだ馴らされ続けたそこはとろけきっていて、太い剛直を難なく呑み込んでいく。
「や、やだ、はいる、はいっちゃう……!」
「ん、真理のここ、すっげぇじょうずにおれの受け入れてる」
 うれしそうに弾んだ声音で耳元で囁かれ、きゅうっと入り口が狭まる。それに感じたのか眉を寄せ、熱い息を吐き出すおとこからはとてつもなく濃厚なフェロモンが放たれていた。真理はそれにあてられ、ますます肉塊をしめつけてしまう。
「ぁあ、ぁ、要さま、かなめさま……っ、おれ、こんな、はじめて、なのに、おかし、ぁ、そこ、だめぇ……ッ」
 これではとんだ淫乱ではないかと、涙が滲んだ。そんな真理を要は目を細めて微笑み眺めつつ、罵るようなことはぜずにじっくりと腰を進めた。
「おかしくなんかねーよ。おれが死ぬ気で我慢してひろげたんだ。真理は、おれのせいできもちよくなっちまってんだよ。だから、ぜんぶおれのせいにしたらいい」
 ぁ、ぁ、と婀娜っぽく喘ぎ、できません、と首を振る。すると。
 なら、なにも考えずに感じればいい。
 そう告げられ、下腹のあたりがどうしようもなく疼いた。
「あッあ、かなめさま、ぁ、あぁ……ッん、ひ、ぁあ、」
「真理……、こんなときまで、さまづけはやめろ」
「ぁ、だって、ぁあ、ぁん、――ッあ!」
 指でしつこく愛された部位に、とうとうペニスでふれられた。凄絶な愉悦が全身を駆け巡り、脳内が真っ白に染まる。
「やめないなら、ずっとここを突くぞ」
「あッあッ、いや、やぁっ! やめ、そこ、ゆるして、ぁ、こわい、だめ、おかしく、なっちゃう……!」
 ごりごり、ばかみたいに丁寧にそこをこすりあげてくる肉棒に、悲鳴じみた嬌声が喉から溢れてやまない。どんなに必死に身を捩っても、要は逃がしてはくれなかった。
「ほら、要、だ。言ってみろ」
「ぁ、ぁ、あぁッ、か、かなめ……、かなめぇ、っ」
 もうまともな思考ができなかった。促されるがまま名前を呼べば、彼は獲物を狙うけもののように舌で唇を舐め、前立腺をいじめるのをやめてずんっと奥を穿ってきた。
「――ッ!」
 あまりの衝撃に声も出せずに仰け反りがくがく体を痙攣させていると、曝した喉に噛みつかれた。痛みと快楽がないまぜになり、目の端から滴が零れおちた。
「も……、やだぁ……っ、ゆるして、かなめ、ゆるして……っ」
 すんすん、鼻をすすりながら懇願するも、苦笑して要は「ここでやめろとか、おまえは鬼か」と真理の願いとは逆に、ピストンを激しくした。
「今だけ、おまえはおれのものなんだ。時間に限りがある以上……、やめろって願いは聞けねえなあ」
「ぁ、ひどい、も、むり、むり……ッ、へんに、なる、あ、あたま、ばかに、なっちゃ、」
 ちりちりとした痛みを鎖骨や胸のあたりに感じたが、それすらも快感を助長させるものでしかなく、真理はどんどん追いつめられていった。
 アナルを犯しているものは限界まで膨れあがっており、その凶悪なかたちを肉壷に覚え込ませるようにして中を抉っていた。
 雄が抜けてしまいそうなほどに腰をひき、しこりを潰しながらふたたび最奥まで貫く。そんな動きを繰り返され、真理は限界だった。
「か、なめ、も、だめ、きちゃう、へんなの、くる……ッ、ぁ、あ、も、や、あ、あッ、」
「ん……、おれも、イく。中にたっぷり出してやるからな」
「やぁっ! な、なかはいや、だめ、ぬいて、おねがい、かなめ、ぁ、だめぇ……」
 なんとかひき剥がそうと、最後の力を振り絞っておとこの肩を押すも、びくともしない。
 腰を掴み、うるさいほどに肌のぶつかり合う音と水音を響かせラストスパートをかけ始めた要をとめるすべを、真理は持たなかった。
「やーッ! ぁ、あ! だめ、いっちゃ、いっちゃう、おれ、いく、あッあ、あぁあぁん!」
「真理……!」
 名前を呼ばれ、ずっと放置されていた性器を荒々しく扱かれた刹那、たまりにたまっていた欲望が弾けた。勢いよく飛び散った白濁は互いの体を濡らすだけでは済まず、シーツにまで染みをつくった。しかし、真理にそれを申し訳なくおもう余裕はない。
「や……ぁ、あ、なかに、でて……っ」
 熱い飛沫が奥にたたきつけられ、涙と震えがとまらなかった。
 強烈な余韻を味わうようにやさしい口づけがふってきて、やっと終わったのだと安堵しつつそれに応えれば、むく、と中に入ったままのそれが力をとり戻していくのがわかった。――わかってしまった。
「え、え、なに、か、かなめさま、なんで、またおっきく、」
「おまえ、ずっとおあずけくらってたおれが一回で満足するとおもってんのか」
「む、むり、むりです、おれ、もう……ッ、ひぁ!」
 ずりゅ、とペニスを動かされ、あまったるい声が意図せず洩れてしまう。
「おれが出した精液が泡だつまで掻き混ぜてやるからな」
 にっこり、文句のつけようのない完璧なうつくしい笑顔で、要は死刑宣告をしてきた。
 ――そこから真理の記憶は、ひどく曖昧にしか残らなかったのだった。


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