「……っぅ、ひ、ぁ……ッ」
 もう、どれくらいアナルを弄られ続けているのかわからない。痛くしないでくれとはお願いしたけれど、こんなに時間をかけるものなのか。
 用意周到なおとこはバッグにローションを忍ばせておいたようで、散々尻の穴を舐めたあとにそれを使って入口をひろげた。
 ぐちゃぐちゃと卑猥な音をたてるそこはすでに三本の指をやすやす呑み込み、まるでマンコのようにうねっている。
 心臓が、どきどきしてうるさい。おれは、期待してしまっていた。硬くて太いものでこの淫らな穴をめちゃくちゃにしてほしいって、そうおもってしまっていた。
「も、い……」
「?」
 顔を腕で隠して、腰を突き出してねだる。
「も、ちんこいれて、いいから……っ」
 ぴたり、動きがとまる気配がして、この台詞はまずかったか? と焦りかけたとき、全身に体感したことのない衝撃が走った。
 ぁ、ぁ、とあえかに喘いでなんとか呼吸をととのえようとしているあいだに、おれは察した。――ああ、挿入されたんだ、と。
「……っ、はぁ……、美月(みつき)のマンコ、すげえ……」
「ぁっ、ゃ、あー……ッ、う、うごかな、で……」
 軽く揺すられるだけで未知の感覚が爪先から這いあがってくるようで、恐怖した。
「冗談だろ? おまえのマンコ、チンポ挿れられてすっげえよろこんでんのに」
「やっ、や、ちんこ、らめ、ぁっ、らめぇ……!」
 絡みついた内壁なんておかまいなしに肉棒を出し挿れされ、ひきつったような、あまったるい嬌声がとまらない。このままではだれかに聞かれてしまう。頭の片隅ではわかっているのだが、次々襲いかかってくる快楽攻撃におれはなすすべもなく敗れてしまった。
「ぁーッ、ど、しよ……、きもちい、おまんこきもちいぃ……ッ」
 指でもいやになるくらい愛された前立腺を、ぺニスでごりっと潰すように擦られる。すると、瞼の裏が真っ白になって下腹のあたりがきゅうんと疼いた。快感を求め、腰が勝手に揺れてしまう。
 ひどくだらしない顔になっているような気がしたが、おとこのぺニスは萎えない。むしろ、どんどん膨れて硬度を増して、腹を突き破られてしまうのではないかというばかな心配さえいだいた。
「ぁ、ぁぅ、は、ぁ、あた、あたる、そこぉ、らめ、はぅ……っ、ひ、ぁあ、あぁんッ」
 媚びた嬌声を奪うようにキスされ、ぬるりと侵入してきた舌を追い出すことなく自らそれに自分の舌も絡める。
 アナルセックスが、こんなにすごい悦を得られるものだなんて知らなかった。戻れなくなってしまう。――おんなに、されてしまう。
「は、ぁあン、おまんこ、すご、よぉ……ッ! おっきいちんこで、おかされるの、すきぃ……!」
 全身が快楽にとろけていく。強要されたわけでもないのに、口からは卑猥な台詞が溢れてやまない。
 強烈な刺激を受け続けていれば限界がくるのは当然のことで、名残惜しさすら感じつつ、おれは高みへとのぼっていった。
「あッ、ぁ、も、いきたい、いかせ、てっ」
 乾いた唇を舐めながら、そう小声で懇願する。
 はしたなく股をひらいて、腕をおとこの背中に回して、もっとしてほしいなんておもっている時点で、この行為は和姦になってしまっていた。でも、我慢できない。ケツの中を突かれるのが、どうしようもなくきもちいい。
「……もっと、可愛くねだってみて」
 耳をかじり、そんな要求をされる。ふだんならば「ふざけんな、もうじゅうぶん可愛いだろうが」と噛みつくところだが、そんな余裕は今のおれにはなかった。
 この変態の好きそうな台詞を働かない脳でなんとか模索し、瞳を潤ませそれを口にする。
「ンっ、ぁん、おれの、みつきのえっちなしょじょまんこに、おにいさんのせーし、どぴゅどぴゅってして、おまんこ、いかせてほしい、よぉ……」
「――ッ!」
 うまく煽られてくれたらしいおとこに膣と化したそこをがつがつ穿たれ、苦しいのにそれを上回る愉悦が思考を支配して、達することしか考えられなくなった。
 じっくりまじまじと見る暇なんてなかったから目で確認したわけではないけれど、おとこの性器はおれのと違って亀頭が大きくてカリがすごくはっているからか、ピストンするたびに中のしこりを掠めるのだ。それが、意識が飛びそうなほどの快感を与えてくる。しかし、さすがに初めてなのに後ろだけで射精するなんて芸当ができるはずもなく、たえきれずに自身の陰茎へと手を伸ばしたそのとき。
「ぁっァッ、ぁ、ゃ、ひぃ――ッ、」
 先走りでびしょびしょに濡れていたおれの息子を、おとこが荒々しく扱いた。
 いっちゃう、もうだめ、そんな言葉が頭の中で渦巻いて、呆気なく絶頂に至ってしまった。
「あッ、あーッ、いっ、らめ、おまんこ、いってる、ぁ、きちゃう、おく、あついの、まんこにぃっ、だされちゃ、ぅう……!」
「出すぞ、奥、美月の淫乱マンコに!」
「んんンーッ!」
 吐精したあとの生理的なしめつけに熱い息を吐き、最奥まで楔を打ち込むと、おとこは雌を孕ませようとする雄のけもののように長々、たっぷりとおれに種つけをした。
「ぁ、く、すげ、絞りとられる……っ、」
 屈辱的な行為のはずなのに。嫌悪しなければいけないのに。立派な雌穴になってしまったそこは白濁を注がれることに歓喜すらしていた。
「ふ……ぁ……、おれのまんこ、うれしそうに、せーえきのんでるぅ……」
 ひくひく、アナルが痙攣し、濁った飛沫を吐き出した余韻に体を震わせる。
 乱れた互いの息がととのったころ、霞がかっていた頭もはっきりしてきて、さっきまでの淫らな自分は別人だったのではないかとすら感じた。が、そんなわけはないし、このおとこには責任をとってもらわねばならない。
「…………あんた、名前、なんだっけ」
 それは、すこし前に聞いたのだが覚える気がなかったので三秒で忘れてしまったものだった。――でも、今は違う。
「……堅一(けんいち)」
 けんいち。
 小さく呟いて、腹を殴る。
「!?」
 声はあげなかったものの、そこそこダメージは入ったのかおれが拳を打ち込んだ部分を押さえつつ、おとこ――堅一は震えた。
「さっさとちんこ抜いておまえが中に出したザーメン掻き出せ。もし腹壊したら――一生恨む」
 こいつは一生恨まれるほうがよろこびそうだな、なんておもったが、それでは困るのだ。
「もし、ちゃんとできたらご褒美をやるよ」
「ご褒美……?」
 チャンスは一度きり。答えはひとつ。間違ったなら、これっきり。今日でサヨナラバイバイだ。
「おまえの望みをひとつ、かなえてやる。――ただし、その内容がくだらないものだった場合、おもいっきりちんこ蹴り飛ばして再起不能にして帰る」
「………………」
 無言で黙々と丁寧に処理をされ、これならだいじょうぶそうだなと安堵し、こそこそとふたりしてトイレから出たあと、願いを聞くだけ聞いた。
 おとこはそれを告げたとき、表情にはほとんど変化がないのに耳が赤くなっていて、可愛いとこあんじゃん、なんて内心で笑えてしまったあたりおれは図太い。
「携帯」
 一言言えば、さっとスマホがさし出される。
「連絡先交換させろ」
 きっと今、おとこの胸は期待に満ちていることだろう。まあ、今日のところはそれが満たされることはないのだけれど。
「じゃあ、後日電話するから絶対とれよ」
「え、」
「腹壊すか壊さないかは、今すぐわかんねーだろ。結果がどちらであっても、二日以内に連絡する」
 えええなんだそれ、とでも言いたげな顔をしている目の前の人物に、胸がすくような気分になった。
 どうせ、二十四時間ばかりの辛抱なのだ。
 堅一は、正解を導き出した。だから、おれは潔くそれを受け入れてやることにした。それだけのこと。


 あしたの朝になっても、腹を壊していなければ。おれは、その日のうちにこのおとこの恋人になっていることだろう。




End.

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