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 うざったくて仕方ない視線の数々に女子の制服を着てきたのは失敗だったか? とおもったが、男子の制服を着てきても結果はさほど変わらなかっただろう。堅一の知人に会ったとき、説明するのが面倒だからおんなの格好をしてきたことは間違ってないはずだ。どんな関係かと訊ねられても「彼女です」と言ってしまえば完結するのだから。
 女子がよくしているように、自然にするりと腕をとれば堅一は顔を真っ赤にした。すでにセックスも済ませているというのになんだこの初な反応は、と若干ひきながら歩く。
 電車で数駅過ぎたところにそいつのマンションはあって、うちからさほど遠くないことに微妙なきもちになった。あのまま変態が悪化していたら、堅一はストーカーになって家までくるようになった気がするからだ。まあ、そんな相手と今や恋人になっているのだから、人生とはわからないものである。
 学生が住むにしては高そうなマンションだが、親が過保護なのだろうか。
 そんな疑問をいだいたが、べつに真相を知りたいとはおもわない。堅一自身に、興味があるわけではないし。
 静かな室内に鞄をおくと、どさ、とやけに鮮明にその音は響いた。
「――ッ、美月……!」
 たまらず、といった感じに後ろから抱きつかれ、うなじをすーはー嗅がれる。
「ちょ……っと、この変態。おれはこんな床とかソファーでするなんていやだからな」
 ぐい、とおとこをひき離そうとそんなことを言ったが、逆に持ちあげられて寝室につれ込まれた。
 投げおとすこともなく、慎重にゆっくりベッドにおれを寝かせるそいつの顔は、その行動からは想像もできない飢えたけもののそれだ。
 する、と胸元のリボンをほどき、誘うようにシャツのボタンを外せば堅一に手首を掴んで制され、そのまま荒々しく唇を重ねられた。
「んっ、ん……、んー……っ」
 片手で器用に前をはだけさせ、肌と衣服のあいだに滑り込んできた手はすぐに乳首へと向かった。
 女子のよりも小さな、敏感でもなんでもないそれを太い指がくりくりとこね回す。自分で弄ることもないし、きもちよくなんかないはずの突起はしつこく愛撫されているうちにむずむずとした感覚をうみ出すようになってきた。
「あっ……、は、ぁン……、」
 ぷくっと膨れ、硬くなって過敏になってきたのは、右側の粒。このままではもう片方と大きさが変わってしまう、と不安になった。
「やっ、ァ、ひ、ひだりも……ッ」
「……乳首すき?」
「あんッ、わかんな……」
 舌が首をつたって胸の尖りに到達し、肌とは色が異なるそこを入念に嬲る。
 下半身はすでにおもいきり反応してしまっていたけれど、乳首よりケツのほうが圧倒的に感じるということを自覚しただけだった。
 はだけたシャツから見えるのは、存在を主張するかのごとく肥大し、いやらしく色づいた果実のような粒。ひっぱられたらとれてしまいそうだと、どこか他人事のようにおもう。
「はあっ、ぁ……、あぁ、ン、んー……ッ」
「し、下もさわるぞ」
 堅一の言葉にこくりと頷き、従順なおんなの子のように恥じらいつつとじていた脚をひらき、スカートを指でつまんで下半身を曝してみせた。
 息を荒くして一目散に下着をとっぱらったくせに、ほかはそのままだ。スカートはともかく、紺ソックスを脱がさないのは絶対にこいつの趣味だと悟った。
 解放された乳首は名残惜しそうにしているけれど、アナルを弄られる期待のほうが圧倒的にまさっていてどうしようもない。
「はやく」とねだれば堅一が先端から溢れていた先走りを全体にひろげ、竿を扱きつつ指で入口のふちへぷにぷにとふれてきた。はあっと熱い吐息が洩れる。もし自分が女子だったらこの瞬間にとぱっと愛液が溢れていただろう。
 ためらいもなく亀頭を口に含まれ、鈴口から出てくる液をじゅるりと吸われ、問われる。
「マン汁すげぇの。勃起クリトリス、舐められるのきもちいい?」
 下品なAVかよ、と脳の隅では罵っているのに、淫語で辱められるとたまらなくぞくぞくしてしまう。
 肯定するのは悔しいけれど、もっとしてほしくて小さく首を縦に振る。
「ん、ん、きもちい、勃起クリちゃん、ぺろぺろされるのきもちぃぃ、の……ッ」
 すると、根元まで深く咥えられ、腰がとろけそうな刺激に襲われた――が、おれが欲しているのはこれではない。
「あッ、あ! ぁ、ア、でもぉ……っ、」
「?」
「おまんこが、おまんこがいちばん、すきっ……、けんいちのでかチンポで、はやく、おまんこずこずこされたい……ッ」
 ねだった途端、唾液まみれになった陰茎を口から出し、堅一はそのまま後ろにしゃぶりついてきた。まだ固くとじているそこにあたたかくて湿った物体がぬるりと入り込んできて、驚いた体がびくんと跳ねた。
「あっ……、ぁん……っ、ひ、は、ぁあ、」
 ものたりなくて胸がじりじりしたが、まだ二回目なのでそう簡単に淫穴がほぐれないことは理解している。指が舌の代わりに狭い門を埋めると、おとこはあいているほうの手でベッドの脇にある棚からローションのボトルをとり出した。
 蓋をあけて中身を出しつつ、堅一は言う。
「なあ、今度、自分でマンコ弄ってるとこ見せてくれよ」
「ひんッ、ぁ、ちょーし、のんな! ぁあ、っン……!」
 中のものをくいっと動かされ、「はやくチンポほしい」って期待でいっぱになってる頭で必死に強がるも、きっとおれは近々こいつの前でアナニーしてしまうのだろうなとおもった。
 だって、きもちいい。やらしいことすればするほど、セックスの虜になっていく。
 垂らされたローションのぬめりを借りて、そのまま二本目が挿入される。たっぷりと液体を注がれて、ぬるぬるになった襞を遠慮なく指が嬲り始めた。
「あッあッ、ぁーッ、ぁん、あ、やぁ、はやく、あそこ、してッ! ぐりぐり、いじめてぇ……!」
 ペニスで突かれると、ものすごい快感を得られる場所は指でもめちゃめちゃ感じる。一度覚えてしまったら二度と忘れられなくなるような刺激だった。それを待ちわびている内壁は、媚びるようにうねってすでに位置などわかっている堅一をそれでも誘導しようとしている。
「えっろいマンコ……」
 ごくり、唾を飲み込む音が聞こえて、おれがひくんと蕾を震わせたそのとき。
「――ッあぁあン! あッあ、そこ、そこぉっ! ひんんッ、ふ、あ、らめ、ぉまんこ、きもちい、あッ、あぁーッ!」
 どうしよう。
 ここは、駅のトイレじゃないから声は我慢しなくていいだろうと考えていたけれど。これでは、隣の部屋に聞こえてしまうんじゃないか。
 そんな不安に怯えていられたのはわずかなあいだで、すぐに思考はぐずぐずととけてしまった。
「……まんこ、そんなにきもちいい?」
「あーッ、あ、うん、すき、まんこぐちゅぐちゅ、すきぃ……! ぁッぁッ、あぅぅんッ」
 ずるずるっと指をひき抜かれ、惜しむような声音で喘いでしまったが、不可抗力だった。次にくる悦のほうがすさまじいと知っていながら、一瞬でも肉壷を満たすものがなくなる寂しさにたえられなかった故の結果だ。
「や、ぁ、はやく、はやくぅ……、うめて、おれのまんこっ……、らめなの、おく、ひくひくして……、おちんぽほしくて、おかしく、なっちゃう……ッ」
 脚を抱え、ひっくり返った蛙のような体勢をとっていることには、もはや羞恥すらいだかなかった。


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