肉壁をひろげている最中にも、身体中にくちびるをおとす。全身が熱くなって、満たされて。声色がどうしようもなく切なげなものへと変化し始めたところで、ようやく挿れてやるつもり――だったのだが。
「い、いいんちょ、も、いれて、いれてください……、ぁ、あぁ……、ほしい、なかに、おっきいの……」
 ぐずぐずと泣きながら懇願されたので、いじわるはせずに今日はあまやかしてやることにする。
「涙」
「んん……っ」
「委員長じゃないだろ」
「ぁ……っ、た、たけひろ、たけひろさん……」
 よくできました、と子どもを褒めるように頭を撫で、シャツを脱ぎ捨てたあと、くちびるをやわやわと食んで屹立を後孔にこすりつけた。
「んっ、ふ、ふぁ、ぁー……、んぅ、ぅ、んんー……!」
 くちゅんと淫らな音をたてて先端を押し込むと、熱を孕んだ粘膜に包まれ脳がじんと痺れるような感覚に襲われた。
 もっとして、とねだるように舌をちゅうっと吸ってくる涙が満足するよう、どんどん奥まで楔を埋めていく。
「は、ぁぅ、うー……、あぁ、ふ……」
 互いの体をぴっとりとくっつけた状態で、しばらく口内を舐め回していると、涙がびくびくと痙攣した。
「……イったな?」
「ぁ、ぁ、ごめ、なさ、ぁン……っ、ど、しよ、とまんな、ぁあ、あぁあ……!」
 かわいそうなほどに脚が震えていたが、そのまま奥をこちゅこちゅとやさしく刺激する。
 あーあーとまともな単語を発することができなくなり、赤子のような声をあげてよがる様子が愛おしく、いっそうきもちよくしてやろうと腰を使った。
「ひ、ぃい、あ、あー、ぁン、あぁあ……ッ、は、ぁ、あぅう、」
 アナル全体で陰茎に吸いつかれ、ずんと下半身が重くなるような悦を得る。亀頭は何度も最奥の壁とキスを繰り返していたが、まだたりない。
「涙」
「あ……、ん……?」
 名前を呼べば、頭のてっぺんから爪先までとろとろな状態だと示すようなとろけた表情を向けてくる涙に、武宏はおねだりをした。
「なあ、もっと奥、入らせろよ」
「……?」
 もう入ってる、とふしぎそうにするおとこに顔をぐっと近づけ、目を至近距離で覗き込みながら教えてやる。
「ここ、入れんだよ。さすがに初めてだろ? ……なあ、おまえの『初めて』、おれに寄越せよ」
 半ば命令のようなそれに戸惑いはしたものの、やはり拒む気はないのか「どうすればいいの」と困ったような素振りを見せ、涙はつつ、と武宏の腕の側面を弱々しくなぞった。
「おれのを押し出すように、力め。ちゃんと、抜けないようにすっから」
「ん、ぁ、あ……」
 こく、というよりはかくん、と人形のようにうなずき、おとこは自分が言った通りになけなしの力を必死に込めて息んだ。
「お、じょうずだぞ、涙」
「ぁ、ぁー……、は、ひ、」
 禁断の扉がひらかれる。わずかにあいた隙間。そこに、むりやり捩じ込むようにして切っ先を押し込んだ。すると。
「――――ッ!」
 涙はぶわ、と両目から涙を零し、声を出せないままはくはくと浅い呼吸をしていた。
「は、ぁ、すげ……」
「ぅう! ぅあ、あぁ!」
 軽く揺するだけで悲鳴があがる。今はなによりも驚きが勝っているらしい体を愉悦で満たしてやろうと、武宏は狭い輪をひろげるようにぐりぐりと楔で円を描いた。
「やっ、いやぁっ! や、やっ、あっ、や、やら、やあぁっ、」
「ん、はは、おまえのケツ、おれの食いちぎりそうなほどしめつけてくる。すっげぇ、きもちいいんだろ」
 ただ挿れるだけでは激痛しか感じない結腸は、ドライオーガズムという射精を伴わない絶頂の最中ならばそれを増長させるほどの快感がもたらされると聞いていた。これはどうやら、噂は真実だったらしい。
「っひ、ぃ、や、こわ、こわれ、ひゃ、ぁー……! や、も、やめ、おかひく、なぅっ」
「もうろれつ回んねえ? 可愛いな、涙」
「ぁぅ……ッ」
 可愛い、と褒めればまた極まったのか、薄い体躯がびくん、と小さく跳ねた。すでに、全身が限界まで過敏になりきっているのだろう。どこにふれても、涙は泣きながらその身を震わせた。
「さ、て。おれが出すまであとすこし、がんばれるよな?」
 頬からつたって口元に垂れてきた汗を舌で掬いとり、そう訊ねれば涙は体で返事をした。もちろんです、と肯定するように肉洞がきゅんきゅんと狭まる。
「は、上等……!」
「ッあぁ! ぁ、あ、ひぃいッ! あーッ! あふ、ぁ、あぁあ、たけひろ、たけひろ、さんっ……!」
 力の入らない腕を必死に伸ばしてくる涙の指に自身のそれを絡め、すき、すき、と壊れた機械のように反復するおとこに口づけ、絡みついてくる襞を強引にふり払いながら、何度も何度もむりやりこじあけた扉の先へ剛直を出し挿れする。
「あぁ、あぁン! もぉ、らめ、らめぇえ……ッ! おれ、しんじゃ、しぬ、ぁ、っう、いや、ああ、ひぃいぃい――ッ!」
 涙がほとんど叫び声に等しい嬌声をあげ、先端から透明な液体を噴きあげながらぎちゅう、と今までで一番きつく肉棒をしめつけてきた瞬間。
「ぁっ、く、は――、っ、あ」
 噛み殺しきれなかった喘ぎを零し、武宏も涙の中へとたっぷり精を放ったのだった。


 
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