「ぁふ、は、ぁ、ん……っ、は、ゃ……」
 サイズの合っていない衣服や下着をずるずるひきおろしつつ、痩せぎすの体躯に手でてきとうに愛撫を加えた。敏感なのか、涙の体はそれだけでぴくん、ぴくんと反応を返してくる。
 どこがいいかなんていちいち確認するつもりはないし、探ってやるつもりもない。相手がおんなならともかく、今回はおとこどうしだ。前戯にかける時間で文句を言われることはないだろう。
「あ、ぁぅ、んっ、や、いきなり……っ」
 前ぶれなくぺニスに指を這わせると、口づけをといて咎めるような視線を向けられた。
「いちいちさわるぞって、言えって?」
 からかうように微笑すれば、不満げにしながらも涙は口を噤んだ。
 初めてではないのだろう。その先も行為はスムーズに進んだ。というか、処女だったらめんどくさくてむりやり突っ込むか「やっぱやめよーぜ」と中断していたかもしれない。我ながら最低だとはおもうが、それが本音なのだからしかたない。
「おまえ、慣れてんだな。楽で助かる」
「ぁ、ん、や、あぁ、んっ」
 ひとをビッチみたいに言わないでください。
 目がそう訴えてきたが、武宏が前立腺を弄っているせいで声にはならなかった。
「そろそろいいか」
「んん、ぁっ、」
 指を抜き、コンドームを手にとる。片手で陰茎を軽く扱き、包装を歯で破いて装着しようとすると、「待ってください」と涙がストップをかけた。
「あ? なんだよ」
「え、ちょ、委員長……、それ、あの、入る、んです、か」
 若干青ざめているような気がしたが、知ったこっちゃない。ここまできてやめるなんて、納得できるわけがないだろう。
「入る。実際入んなかったやつなんていなかったし」
 裂けなかったことがないわけではないが、と告げなかったのはせめてもの慈悲だ。
 大きすぎてもいいことねえよなあ、と心の中でぼやいたのち、武宏は宣言する。
「まあ、恨むなら軽率におれを誘った自分を恨め」
「あ、うそ、ちょ、まっ、あ、あ……!」
 ローションを追加で垂らし、ぬめらせた穴に狙いを定め、挿入していく。なんやかんや言っていたわりに、スムーズだった。きつすぎず、ぐあいはかなり良好だ。
「は、……っ、ほら、杞憂だっただろ?」
「ぁ、ぁ、や、あー……っ、ひ、おっ、きぃ、あッ、あん……ッ」
 白く、細い脚が視界の端で跳ねる。逃げられないように腰を固定させながら深くまで犯していくと、亀頭になにかがふれる感覚があった。
「お、ぜんぶ入ったぞ」
「んぁ、は、いいんちょ、おねがい、ちょっとだけ、ちょっとだけ、まって、おねがい……」
 あふあふとくるしげに息をする涙に加虐心が煽られたが、ぐっとこらえて唾液を飲み込んだ。
「っは、あ、ぁ……、ふ、ぅ、」
 指先でまろやかな顔の輪郭を撫で、猫にするように顎の下を擽る。ん、ん、とか弱く、愛らしく啼く様子に、武宏の我慢は限界に達した。
「――っひぃ! まっ、あ、まだ、や、やぁあんっ」
 遠慮なく、めちゃくちゃに掻き回す。肉壁が抉れてしまいそうなほどに、荒く、荒く。
「あッあッあッあッ、あ、あ! や、はげし、いいんちょ、はげし……ッ!」
「おまえが待たせたせい、だろうがっ」
「あぁあァ……!」
 縋るものを求めてさ迷った手が、腕を掴んだ。自分のものよりずっと弱っちそうなそれに、ますます乱暴にしたいというきもちが湧きあがる。
「んっ、ん、んー! あぅ、あ、やぁあ、おく、おくぅ、あたる、あぁ、いやぁっ、きもちい、よぉ……!」
 やさしくなんてしてやる気はないが、きもちよくさせてやらないわけではない。きちんと反応を見ながら突きあげているのだ、これでも。
 角度をつけて前後に抜き挿しすれば、カリが前立腺をかすめるらしく涙はがくがく痙攣しながら悲鳴のような嬌声を放った。
「ひぃんッ! あ、ぁあ、や、いく、いく、いいんちょぉっ、あっやっ、いくぅっ、あぁーッ!」
 むりやり絶頂に押しあげられたせいで、涙は性器を弄ることなく達したらしい。鈴口からとろとろと体液を零し、中を搾りとるようにしめつけてくる。
「っは、きつ」
「ぁ、ぁ、やめ、ぁ、いま、だめ、いった、いった、からぁ、あぁあ、やめ、や、やだぁ、っ」
 小刻みに奥の扉をノックする。上の口ではいやだむりだと言っていても、下の口はむっちり絡みついて武宏を離そうとしなかった。
「は、冗談。こっからが本番だっつーの」
「あ、や、うそ、こんなの、だめ、おれ……っ」
――委員長以外と、セックスできなくなっちゃう。
 途切れ途切れにそう訴えてきた涙に舌舐めずりし、容赦なく最奥を穿つ。
「ひ、うぅ、あ、あー、また、くる、ぁ、や、も、だめ、いく、いやぁ……っ」
 悩ましげに寄せられた眉、涙に濡れた睫毛に頬。こんなときまでうつくしいおとこに噛みつくようなキスをしかけたのち、ラストスパートだと言わんばかりに腰を激しく打ちつけた。
「ん、んむ、んぁ、あっ、あっ、あッ! やーっ! ひ、いく、いってる、あぁん、あーッ、や、や、あぅう、やぁあーっ!」
 力が入った両膝で、体をぎゅっとしめつけられた。痛くはない。一番深いところに到達した瞬間、そこでぐりりと小さく円を描くように腰を回すと襞が今までにないくらいざわめき、武宏もたまらず射精に至った。
「……っ、はー……」
 天井を見て恍惚としながら荒くなった呼吸をととのえている涙の中から自身を抜き去り、ゴムをとって結び、ゴミ箱に投げ捨てる。しまらなくなった後孔から覗くローションのてかりとピンク色の肉がやたら艶かしくて、武宏は目を眇めた。
「……白布」
「っあ、は、い」
「おまえ、まだいけるか?」
 興奮が冷めやらない。久々だったせいもあるのか、一回では終わることができなさそうだった。涙はそんな自分に「うそでしょ」とでもいいたげに瞠目している。
 彼の返答次第では新たにだれかを呼び寄せるしかないと考えていたが、それは杞憂に終わった。
「……いいですよ。意識なくなるまでは、つきあいます」
「そりゃありがてぇ」
 そんなにしねえよ、とは返せなかった。自分でも驚くほど性欲が高まっている。そうとう性的欲求をためこんでいたらしい。
「後ろ向け」
「ん……」
 命令すれば、おとなしく従う涙。
 ひくひくと収縮を繰り返している穴に、新たな避妊具をつけた剛直をめり込ませる。
「ぁ、ぁあ……、」
 悦に濡れた声が押し出されるようにして発された。おとこの顔が見えない体位なのは残念だが、やりたいことがあるのでしかたがない。
「えっ、や、なに?」
 武宏が足首を掴んだ途端、不安げに、必死にこちらの様子を窺い始める涙。
――もうおせぇよ。
 にっと笑って律動を開始すると、白い背中が大袈裟なほど震えた。
「ひ、ぁ、まっ、あ、やっ、あーッ! や、なにこれ、ぁ、ずっと、あたる、あたっちゃ、」
「はは、きもちいいだろ」
「やっ、あっ、ひ、だめ、だめぇっ!」
 この体勢は征服欲がこれ以上ないほど満たされる。足首を掴まれている側が逃げようとしてもそれがかなわず、かくんと崩れおちるさまがひどく愉快だ。


 
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