「やあ、秘書くん!今日も良い朝だね」

たった今私の"良い朝"は粉々に消し飛んでしまった。このクソ上司のせいで。今すぐこの無駄に整ったこいつの顔面に蹴りを入れてやりたい。けれど何とか思いとどまった。

「どうした?カルシウムが足りないのかな?」
「………」
「そんなんだから、"育たない"んだよ、君は」
「どこの話をしてらっしゃるんですか、アーサー・オーギュスト・エンジェル聖騎士さま?」
「どこって君、それを私に言わせるのかい?」

やっぱり蹴りいれてやろうか、よしそうしよう。何が悲しくてこんな変態の秘書なんかしなくちゃならないんだろうか。人事部のあまりの鬼畜っぷりに腹が立つ。あの人の下につけるなんて…と羨ましがられたけど正直もう逃げ出したい気分だ。
相変わらず聖人顔のアーサーにイライラが募る。この男は顔こそ天使みたいだけれど中身は悪魔より悪魔らしい気がする。部下にセクハラしてばっかりだし。

「…お気に入りのシュラ先輩はどうしたんです」
「チッ」
「(…舌打ちはするし……)」
「シュラはあの悪魔に奪われてしまったんだ」
「ああ、フェレス卿ですか」
「その名を口にするな!忌々しい!!」
「…じゃあ例のあの人。」

そう言えばアーサーは神妙な顔でこくんと頷いた。本部が危険視しているようにやはりあのメフィストという男を気にしているらしい。…私的な嫌悪だけじゃなく(断言は出来ないけど)。

「ああ…シュラが恋しい」
「…はあ」
「特にこの辺り」
「もう胸って言ったらどうなんだよ!!」
「胸?何の事かな」
「A・O・A!(アホ・オヤジ・頭沸いてる!)」
「人の頭文字で何てことを…!」

まったくこの上司は…1にセクハラ2にパワハラ…やりたい放題だ。シュラ先輩が逃げ出したくなるのも分かる(逃げ出した先も変態上司だったけど)。
偉くて、強くて、優秀で、顔も良くて、声も良くて。それなのにこの人は人として何か大切な物が抜け落ちている。いわゆる残念な人だ。それでもやっぱり普段はかっこよくて、何だかんだ尊敬してたりもする。
アーサーは私の頭を撫でてにこりと笑った。普段されていないからちょっと焦る。


「それより秘書くん」
「何ですか」
「今日は午後から空いていたよね?」
「空いてますね」
「それじゃあちょっと買い物に行かないかい?」
「…私?」

整った顔は「もちろん」と言ってまた笑った。顔が熱い。熱が有るのかもしれない。



「その下着ちょっと大きいだろう?ちゃんとフィットしたのをつけないと胸にも負担が…」

とうとう奴の白い顔に私の足がめり込んだ。


権力振りかざすな!!

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変態で愛します。」さまに提出しました。

ギャグはなかなか書く機会が無いんですが…書いてて楽しかったです。アーサーってなんとなーく外道な感じがするのは私だけですか←
素敵な企画に参加させて頂いてありがとうございました!

7.26.碧





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