「という訳でさ、毎朝折原を押し倒しといてくんないかな」
「折原よりも何よりも貴女の頭が心配よ」

非番の某日、池袋のカフェ。
真剣な顔してそう言えばべしっと手のひらで頭をはたかれた。私の向かいに座っている犯罪級の美女は高校からの親友、矢霧波江である。

「だからね、波江!折原さえ池袋に来なければ私は平和なの!あいつ年下だし無駄に突っ掛かってくるし……しかも帰れば波江という良妻賢母が」
「誰が良妻賢母よ妻でも母でも無いわ!」

そしてまた頭をはたかれる。高校時代から一体いくつの脳細胞が死滅したんだろうか。

「私はあくまで誠二が好きなのよ!」
「相変わらずだねえ…」
「貴女の年下嫌いも相変わらず治らないのね」
「……………」


波江は少し黙ってから店員を呼ぶと私のカップにカフェオレのお代わりを頼んでくれた。優しい。これだから私は波江が好きなんだ。


「…いっそ波江と結婚したい」
「はあ?」
「だって波江ってば優しくて綺麗でかっこよくて可愛いんだもん!それなのになんで折原なんかと結こ…」
「いい加減にしなさいよアナタ」

再度私の脳細胞が死滅した。
でもそう言いながら波江はいつも私の相談や無駄話を聞いてくれる。こんな私を見放さないでくれる。本当にいい子なんだ。


「なーに?二人で作戦会議?」
「出たな折原っ」
「…臨也」

噂をすればなんとやら。いつも通り突然現れたその男に私はさっと身構えた。この野郎、ホントはどっかで見てんじゃないのか?

「今日はオマワリさんじゃなくてこっちに用だよ」
「…何かしら」
「仕事だよ波江」


ああ、なんか二人で仕事の話始めちゃって。親友をとられて寂しい私はぼんやりと外を眺めていた。


「…!!」

と、目にはいったのは巡回中の葛原(兄)さん。私はそのまま波江にだけ手を振って全速力でカフェを後にした。



オマワリさんと
大親友



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