池袋の何処かで雄叫びと大きな衝撃音がした。暇な交通整理をのろのろとやっていた私はぴん、と耳を立てる。これは…出番だ!
あとお願いします、と仲間の警官に言い残し私は路肩に止めた愛馬(白バイ)にまたがった。

ブォン、
アクセルをふかし、現場に直行する。目指すは金髪・グラサン・バーテン服だ。
ゴミ箱やら自動販売機やら標識やらが舞い上がっている場所に最短ルートで到着すると、勢いで前輪を持ち上げバイクごと飛び上がった。


「はーいお兄ちゃん、器物損害現行犯ねー!」

傍らのメガホンでそう言うと、彼の身体をバイクの前輪と後輪の間に挟み込み道路に倒す。そしてそのままスタンドを立てて私は愛馬から下り立った。


「相変わらず見事だなあ…」
「やほ!トムさん!」

ざわざわと野次馬連中がはけていく中、こちらに近づいてくるドレッドの男性―トムさんはもう随分と見知った人物だ。


「いつもご苦労さん」
「まったくだよ!…でもいいの!いつかトムさんがグレーからブラックゾーンに踏み込んじゃった時は必ず私がパクってあげるから!速攻カツ丼コースね」

「それは…遠慮しとくよ」

私とトムさんが世間話を交わしている間に、背後でゆらりと殺気が流れてきた。お兄ちゃん…もとい平和島静雄が私の愛馬を軽々と持ち上げ、後ろから睨んでいるのだ。

「おい…痛ぇじゃねえか…」
「バイク置くときはそーっと優しく頼むよお兄ちゃん」

「…チッ」

平和島静雄は舌打ちをしてバイクを道路に置いた。相変わらずの力持ちだ。


私は池袋の怪物…つまり平和島静雄鎮圧担当のお巡りさんである。夢は上司の葛原さんとツーリング、好きなものは酒とバイク(愛馬)と年上の男性なのだ。年下は男として見ていない。この仕事だってもし葛原さん直々の命令じゃなかったら確実に断っていただろう。まあ葛原さんの命令だったから速攻引き受けたんだけど。


「悪いけどわたしお兄ちゃんに用無いから。止まったなら帰るわ」
「…な、てめっ」
「じゃあねトムさん…また来る!」
「おう!またな!」
「トムさん!?」


私は愛馬にまたがり、エンジンをかけた。


オマワリさんの
お仕事




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -