財前くんと出会い着替えを見られた翌日から、私の生活に変化が現れた。
まず、財前くんは私の教室によく現れるようになった。
いや、教室に限らず私の行くとこ行くとこに現れる。
最初は、同じクラスの忍足くんに用事があり私のところにはそのついでで来ている、とばかり思っていたのだが、3日目辺りから私を狙っているということに気が付いた。
挨拶をしてくれたり世間話をするのはいいのだが、よくわからない洋楽のCDを押し付けられたり(邦楽派だと言えば睨まれた)、コスプレをねだられたり(それを見て鼻で笑うつもりだろう)、背中のラインをなぞられたり(すごくゾワゾワして嫌だ)、挙げ句の果てにはブラジャーのホックを外そうとしてくるので(実際、一回外れかけた)、疲労が溜まりまくりである。
それに、新学期早々に財前くんにこうも絡まれ続けているせいか、クラスで忍足くん以外の知り合いができない。
ぼっちである。
それを小春ちゃんに相談したら、「いやーん!私のブラのホックもは、ず、し、て!」と言われてしまい、そのすぐあとに一氏くんに頭を殴られた。
端的に言えば、相談の意味がなかった。

考えては鬱になり、はあ・・・、とため息をつきながら屋上の隅でご飯を食べていたら、ひょっこり財前くんが顔をだした。
なぜこの場所がわかったのだろう。


「隣ええですか?」

「ええですよ」

「先輩、関西弁ヘタ」

「知ってるよー」


財前くんが私のすぐ隣に腰をおろす。
彼の手にはコンビニの袋が握られていて、今日のお昼はパンなんだと勝手にのぞき見をした。
部活男子なら足りないだろうに。


「名前先輩、これ欲しいん?」


あまりにガン見していたので、財前くんが私にジャムパンを差し出した。
私は3時間目の家庭科でカップケーキ(大)を食べていたため、丁重にお断りする。
自分のお弁当さえ残しそうなほど、お腹が空いてないのだ。
財前くんは「ふーん、」と一言、パンにかじりつく。
そしてしばらくの間、会話が無くなる。
沈黙が辛くて何を話そうかと悩んでいたら、財前くんが「名前先輩」とまた声をかけてきた。


「弁当残すん?」

「あ、・・・かもしれない」

「ならから揚げ下さい」

「いいよー」


手でつまんでくれ、という趣旨でお弁当を差し出したら、財前くんはムスッとした。
何が気に入らないのかがわからずに困惑した表情で財前くんを見れば、「手が汚れる」と睨まれた。


「じゃあどうすれば・・・」

「箸があるやろが」

「ど、どうぞ」

「はあ?」

「へ?」

「あーん、やろ」

「はあ・・・」


お前はお子様か、とツッコミを心の中でしながら箸でから揚げを取り、あーん、と財前くんの口の中へ運ぶ。
従兄弟のまーくん(3歳)の世話をしなれてるからか、癖で自然にやってしまったのがいけなかった。
もぐもぐとから揚げを咀嚼する財前くんを見て、しまったと思った。
この箸、このあといったい誰が使うのか。


「名前先輩、食べへんの?」

「えっ!?いや、た、食べるよ」


意識したら負けだな、と無理矢理思い込み、私は白米を口に運んだ。


「間接キスやな」

「ぶふっ・・・!」


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