「やーっとくっついたな、あの二人」

「ホンマ、これで少しは財前が大人しくなればええんやけど」


俺と謙也は少しだけ開いた扉の隙間から部室の中の様子を伺った。
中には財前と名前が居て、どうやら部活が終わって名前が日誌を書いているのを、財前が文句を言わずに待っているようだ。
マイペースで飄々としている財前がこんなになるのは、多分名前の前だけじゃないだろうか。
時々二人でちょっかいかけてはクスクス笑っていて、幸せそうなカップルそのものである。


「・・・ええな、あれ」

「・・・確かに」

「白石は作らんかっただけやん。羨ましい奴やな」

「やって、言い寄って来られんのはどうしても苦手やねん」

「モテる男は辛いな」

「せやねん」

「嫌味に気づけや」

「わざとや」


謙也といつものノリで漫才を繰り広げていると、勢いよく扉が開いた。
中がよく見えるようにはなったが、財前が物凄い不機嫌な表情で俺達の前に仁王立ちをした。


「何なん、先輩ら。帰ったんとちゃうんですか」


眉間に寄ったシワが後輩の癖にとても怖い。
財前の後ろに見える名前は財前の表情が見えてなくても何となく状況がわかるらしく、口パクで「ごしゅうしょうさま」と呟いた。


「あー、・・・忘れ物してん!な、謙也」

「せ、せや、白石がうっかりな・・・!」

「嘘も甚だしいで先輩ら」


無言の威圧感で俺達に出てけと脅す財前。
謙也と顔を見合わせ苦笑しあい、「帰るか」と部室を後にした。


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