名前先輩がニヤニヤしながら見ているのは某有名音楽雑誌。
先輩らしいとも思ったし俺も読みたかったからあとで貸してもらうことにした。
べつにそれだけならいい。
しかし見ているページがいけない。
この間先輩と一緒に見に行ったバンドの特集記事らしく、俺らが見たライブの写真もちらほら載っている。
ムカつくことにボーカルがイケメンであり、また先輩がそれを食い入るように見つめているのもムカつく。
不機嫌オーラをわざと出しながら名前先輩の背中にのしかかってやったら、「ぐえっ」と変な声を出してた。
ざまあみろ。
「財前くん・・・私なんかしたっけ・・・」
「ホンマアホや先輩。犯したろか」
「やめてー!」
名前先輩はなかなかセックスさせてくれない。
ガードが固いというか、万が一のことがあっても責任がとれる歳にならないと嫌だと言っていた。
俺のことが嫌いじゃないならそれでいいとは思ったが、からかいがいがないので、ソレをネタにして名前先輩からのキスをねだることにした。
「ほんなら、名前先輩。いつもの」
「・・・えぇー」
「嫌なら犯すで」
「・・・うう・・・」
渋い顔をして名前先輩は俺を見る。
恥ずかしいから自分からキスをするのが苦手だ、と言っていたのを思い出す。
けれどセックス以外なら良いと約束したのも先輩だから、嫌とは言わせない。
「名前」とわざと先輩の名前を呼び捨てにし、こちらに呼び寄せる。
のろのろと俺の正面に来た先輩は、「ひかる」と俺の下の名前を呼び、俺に目を閉じさせた。
そういう約束なのだ。
「途中で開けたら、怒るからね?」
「ん、」
多分今可愛え顔してんやろな、と想像しながらキスを待つ。
しばらくして、音も立てずに柔らかい唇が重なった。
本当なら目を開けて名前先輩の顔を見たいが、それをやったらしばらく名前先輩がいじけるからそれはしない。
だが、抱きしめることは禁止されていないので少し空いた距離を埋めるように抱き寄せたら、名前先輩もきゅっと俺のTシャツを握った。
「さっき、機嫌悪いのどうしたの?」
「・・・俺んこと見てへんのにムカついた」
「・・・あはは、財前くんかわいい」
正直に白状したら可愛いってなんやねん。
先輩をジト目で見ていたら、先輩は苦笑して俺に雑誌を見せた。
「ここ、わかりにくいけど、私と財前くんが一緒に写ってるの」
ここ、と指差されたのは、先月一緒に行ったライブの写真。
確かに名前先輩と俺らしき人間がみえにくいところに写っていた。
「・・・あー、名前先輩めっちゃかわええ」
「か、かわいくないよ」
「かわええ。あと、好き」
「・・・!!」
あ、名前先輩ショートした。