名前先輩のところに遊びに行っただけのつもりだったのに、名前先輩が泣いた。
映画とかを見て泣いてるのは見たことがあるが、こんな名前先輩は初めて見た。
最初は驚いて動けなかったが、クラスがざわつくのに気付いて名前先輩を教室から連れ出した。
「財前くん授業はじまるけど・・・」
「名前先輩その顔で戻るん?」
「あ、いや、その・・・」
名前先輩はしどろもどろになりながら頭をかいた。
都合が悪くなると苦笑いしながら髪をくしゃくしゃにするのが名前先輩の癖だ。
まだ涙目の先輩が可愛くて、正面からギュッと抱きしめたら「ヒッ」と悲鳴をあげた。
最近は無反応だったからなんだか新鮮だ。
「財前く、だから好きな子に、」
「好きなんは名前先輩や。初めて会った時からずっとアタックしとんのに全然気付かんかったやろ、名前先輩」
「へ・・・え!?」
「鈍いッスわ、ホント」
「だって・・・」
「好きな奴意外に抱き着いたりせぇへんし」
今だってそうやろ、と先輩に言えば、またボロボロと涙を零しはじめる。
しかし先輩は自分が泣いているのが理解出来てないらしく、自分でもビックリした顔をしていた。
子供をあやすように背中を優しく叩いたら、「うー・・・」と可愛い唸り声が聞こえてくる。
それから名前先輩の腕がぎこちなく俺の背中に回り、弱々しくシャツを掴む。
名前先輩からこうやって触られたのは初めてなので、柄にもなく緊張した。
「なんか私馬鹿みたいじゃんかぁ・・・」
「・・・せやな」
「・・・・・・そこ、同意する?」
「ええやないっすか。・・・で、返事欲しいんやけど」
「・・・」
返事を急かすと名前先輩は黙り込んだ。
俺だってかなりの決意で告白してたんだから、返事がないまま曖昧に終わらせたくはない。
「私でいいんですか」
スンスンと鼻を鳴らした名前先輩が涙目で上目遣いなんてするから、先輩の言葉に返事をする前に口付けた。
散々抵抗されたが、力で負けるわけがない。
骨折させるくらい力強く抱きしめて、何度も何度も角度を変えては口付ける。
「先輩がいい。先輩以外なんて嫌」
「・・・私も」
私以外の人と財前くんが仲良くしてたらやだ、と名前先輩が言ったのを言い訳にして、俺は名前先輩を押し倒した。