財前くんとライブに行った日の翌日、月曜日なので部活はないがミーティングはある、と同じクラスの千歳くんが教えてくれた。
というか、千歳くんに伝言を頼んだのは誰だ。
彼に伝言を頼んだときに、ちゃんと伝わる確率は50パーセントなのに。
ミーティングと言えばレギュラーと補欠は全員参加。
もちろん財前くんも居る。
昨日から財前くんを意識しっぱなしの私は、なるべくならミーティングに行きたくないとサボることを考えていた。
しかしマネージャーは私しかおらず、ミーティングに誰かが代わりに出てくれるというような代えが効かないのだ。
よっぽどのことがないと休みは許されない。
ハァ、と憂鬱なため息をついていたら、「先輩ブルーやな」と財前くんに頬をつっつかれた。
・・・って、財前くん?
「ぎゃー!」
あまりにも自然に財前くんがいたものだから、私は慌てすぎて椅子から転げ落ちた。
「先輩アホすぎる・・・」
「だ、だって・・・」
「まあそんな先輩も好きやけど」
財前くんが不意をついてとんでもないことを呟いたので、私はまたひっくり返った。
「いったー・・・」
「先輩さっきから何してんスか。吉本でも入るん?」
「入らないよ・・・もう」
財前くんのせいだ、とは口が滑っても言えなかった。
それだと私が財前くんのことを好きなのがバレ・・・あれ、私って財前くんのこと好きなの?
自覚してくると無性に恥ずかしくなってきて、私は固まって動けなくなった。
「先輩?」
「はいぃっ!」
「何でそんなキョドっとるんですか。俺なんかしましたか」
「し、してないけどさぁ・・・。その、好きとか言うから、さ、いやあの、先輩からかっちゃだめだよ」
財前くんかっこいいから女の子みんな期待しちゃうよ、と自分で言って後悔した。
本音ではあったけど、まるで私が意識していないような言い方だったかもしれない。
意識しているのがばれないという点では良かったかもしれないが、それで財前くんが私のところに来てくれなくなったら、寂しい。
そんなこと考えてたら、無意識のうちに涙がでてきた。
「ちょ、先輩・・・?」
「あれ、え、いや、泣いてないよ。悲しいとかじゃなくて・・・なんでだろ・・・」
泣くほどの悲しさじゃなかったのに、今涙が止まらないのはどうしてだろう。
教室にいたクラスメイトも、急に私が泣き出したので何事かとザワザワし始める。
理由が曖昧なまま泣き出すというアホな状況が恥ずかしくて涙をゴシゴシ拭いていたら、財前くんにその手を力強く掴まれた。
「・・・先輩、来て」
真剣な顔の財前くんに手を引かれ、私は教室を出た。