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Nとは友達になった記念としてライブキャスターの番号を交換した。
交換しようといった時は物凄く渋っていた彼だが、ホウエンのことを教えてあげると言えばやっと番号を教えてくれた。
これからカラクサタウンに向かうというNと別れたあとは、二匹と一緒にノボリさんの家へと帰った。
思ったより長く話していたらしく、家についた頃には既に陽は傾いていた。
「さて、…今日は何にしようか」
「シャーン?」
「ん?なあに、シャンデラ」
「シャン!」
サイコキネシスを使って料理本を開くシャンデラ。
いろいろと彼なりのオススメを教えてくれているようだが、今の私にはハードルが高いものばかり。
「…ありがとう、気持ちだけ受け取るね」
「シャン!シャーン!」
オススメしたものが却下されたと憤慨するシャンデラだが、私のレベルに合わないメニューを選ぶシャンデラが悪いのだ。
結局、サラダに味噌汁に焼き魚と平凡なメニューになってしまった。
今日は残業がないらしいので、ノボリさんの帰宅時間は21時半だ。
ご飯も作り終えてヒマになった私は、約束通りチルタリスの羽毛の手入れをしてあげる。
チルタリスのフワフワした羽毛は、手入れを怠るとすぐにゴワゴワになってしまって触り心地が悪くなる。
だからトレーナーである私が週に何度か整えてあげるのだ。
機嫌が良くなったチルタリスは、綺麗なソプラノのさえずりで歌い出す。
その心地よい音色と柔らかな羽毛の相乗効果からか、私は何時の間にか眠りに落ちていた。
「ナマエ様、ナマエ様」
「う、うーん、…!」
「ああ、起きられましたか。こんなところで眠られては風邪を引きますよ」
ノボリさんの声にハッとして起き上がれば、既に空は黒く塗りつぶされていた。
しまった…と頭を抱えれば、ノボリさんはポンポンと私のその頭を撫でる。
「お疲れだったのでしょう?ゆっくりお休み下さいまし」
「いや…、ノボリさんとごはんたべます…」
のそのそと起きて、ぐっと背伸びする。
私と一緒になって眠っていたチルタリスをボールの中に戻して、冷めてしまったであろう料理を温めるためキッチンへと向かう。
ノボリさんも手伝ってくれたので、料理はすぐに食卓に並んだ。
「…あ、ノボリさん」
「なんでしょうか」
「おかえりなさい」
「…ありがとうございます」
ノボリさんは小さく微笑んだ。
今はくすぐったい感じがあるけれど、これが日常になる日も近いのだろう。