夜を潜るふたり
(ぬるい性表現アリ/R-15くらい)
「私、言いましたよ」
クダリさんの童貞がほしいって。
ナマエはニヤリと悪戯っ子みたいに笑ってゆっくりと体重をかけ、ぼくをソファーの上に押し倒した。
突然のことに目を白黒させてるぼくを見て、すっごく嬉しそうだ。
今日は初めてのお家デートで、もう付き合って3ヶ月も経つからそろそろエッチなこともしたいなあなんて考えてはいたけど、まさか押し倒される側になるなんて。
いや、ちょっとだけ、想像してた。
ナマエは恥ずかしがり屋だけどサディスティックだから、隙を見せたらぼくが下になっちゃうって。
だからなるべく余裕を見せて隙なんて無いように振る舞ったはずだった。
でも、今のぼくはナマエにシャツのボタンを開けられている。
だめ、だめ、って言っても、ナマエにキスされたらぼく何も言えなくなる。
ペロリと唇を最後に舐められて、気付いたときにはボタンは全部外されていた。
「クダリさんの乳首、かわいい」
「ひゃっ、あっあっ」
「くわえてもいいですか?」
「んっ、だめっ、ん、だめぇっ・・・!」
ツンと立ち上がったぼくの乳首を人差し指の腹でぐりぐりとなぞるナマエ。
それが、悔しいけどすっごく気持ち良くて、もう抵抗する力なんてない。
すっかりふやけきったぼくを見て、ナマエは妖艶に笑い、「いただきます」なんてふざけてぼくの乳首をその可愛い唇でくわえた。
「!!!」
びっくりして飛び起きたら、寝汗をかいていた。
どうやら先程のは夢だったらしく、ナマエはぼくの隣でスヤスヤと寝息をたてていた。
「そういえば、この夢、前にもみた・・・」
あれはナマエと付き合う前で、全くおんなじシチュエーションだった。
だけど、今日の方が何倍もイヤラシイ。
「・・・エッチしたからかな」
今日は、ぼくが童貞を捨てて、ナマエが処女じゃなくなった日。
初めて同士だし、ぼくが上がいいって何回も頼み込んだから、一回目のセックスはぼくが攻めでいられた。(気持ち良くしてあげるほうが「攻め」で、気持ち良くされるほうが「受け」なんだって。ナマエに聞いた。)
いっぱいいっぱい愛し合ったから、疲れてお互いに裸のまま寝ちゃったんだっけ。
ナマエの裸をじっと見てたら、ナマエが寒そうに身じろぎする。
汗も大分引いたところで布団に入り直し、ぼくはナマエの身体を温めるように抱き着いた。
そしたらナマエが起きちゃった。
「クダリ、さん?」
「ゴメンね、起こしちゃった」
「んーん、・・・クダリさんなら、いい」
ちっちゃい欠伸まじりにナマエがそう言って、でもまだ眠いのかぼくに擦り寄るように抱き着いて目を閉じた。
ナマエがくっついてきてくれたことが嬉しくて、ぼくはギュッギュとナマエを閉じ込めるように抱きしめる。
「そういえば、・・・夢を見ました」
「夢?」
思わずドキっとする。
態度には出さないように頑張ったけど、心臓が変にバクバクしてる。
ナマエに気付かれちゃうかも。
でもナマエは気付いていないようで、眠そうな声で話を続けた。
「わたしが、クダリさんを気持ち良くしてあげる、夢」
「へ、へえー!」
「クダリさん、可愛かったな・・・。あ、今日は、かっこよかったけど・・・」
ふふっ、てナマエが笑う。
ぼくは嬉しくなってナマエにキスを落としてくと、くすぐったそうに身をよじった。
「でも、人に言うと、夢って実現しなくなるって聞いたよ?」
確か、そうだったはず。
でもナマエはぼくをじっと見て、それからドキドキするような笑みを見せて「でも、ふたりが同じ夢を見たら、それは実現しますよ」ってぼくの肩にキスをした。
跡は、ほんのり薄く、ついていた。