若かりし頃の話


 問い、夜中目を覚まして「うあ゛ー」と呻きながら起き上がったら隣に同じ船のクルーが裸で寝ていたときの気持ちを答えなさい。

 答え、「はっ!? ちょっと待てどういうことだ!?」と叫ぶ。


 久々に島に上陸し、ホテルを取って女を囲い、飲んでいたと思っていたのだがどうしてこうなっているのだろうか。酒癖が悪いおれは、前後不覚に陥るほど飲むと大抵近くにいる誰かに手を出すのだ。いい女がいれば次の日には落ちている。記憶がない間に落としてしまうのはつまらないと言えばつまらないが、その島にいる間はいい関係が築けるのでいいだろう。
 ……だが問題は今、おれの隣にいるのが美女ではなく、むさいおっさんであるレイリーだということだ。しかも裸。シーツを剥いで確認してみたところ、全裸だった。しかも白濁した液が見て取れた。これは完全に事後である。おれとしたことが、レイリーの前でそこまで飲むとは思えない。だがこれは……。
 せめてシャンクスだとかバギーだとか可愛い面をした船員だったら何も問題はなかったのである。可愛い面してるのだから酔った頭で手を出してもおかしくない。そして、おー悪かったなお前の運が、とかなんとか言って丸め込んでしまえばいい。だが何度も言うが目の前にはレイリー。あのレイリーである。おれの声で目を覚ましたらしいレイリーはうるさいと言いたげに目を開けて、近くにあったメガネをかけてにっこりと笑った。


「おはようナマエ」

「おはよう、じゃねェよ! お前なんで人のベッドで寝てんだよ!」

「ここはお前のベッドではなく、おれのベッドだ」

「……マジかよ」

「ああ、マジだ。昨晩は随分好き勝手してくれたな」

「…………マジかよぉ……おれ、お前に勃ったのか?」

「そうだな、そうじゃなけりゃあおれのケツには入らないな」


 変な息が漏れた。マジか。マジか。知りたくなかった。可愛い男ならまだしもこんなおっさんに……。ショックがでかすぎた。落ち込んだおれは項垂れ、そのままベッドに沈み込んだ。やられた方のレイリーはなんてこともないとでも言いたげに笑っている。なんでまた? 普通、無理にやられたり、おれのように酔った失敗なんてものは大層嫌な気分になるはずだ。
 おれがじいとレイリーのことを見つめていると、口角をあげて笑みを深めた。それがどうしてか艶っぽいものに見えてしまっただなんて、おれはどうかしているんじゃないだろうか。……どうかしている? そうだ、どうかしているとしか思えない。レイリーもどうかしているとしか思えない。


「お前まさか、なんか、盛ったか?」


 まさか男にやられる趣味なんかないよな、と言いながら唇をひきつらせれば「あるわけないだろう」と笑い飛ばされて一安心。そして「だが薬は盛った」と言われて地獄に落とされたような気がした。要するにおれははめられたのだ。この男に!


「おま、お、お前! なんでそんなことした!?」

「ははは、なに、お前と寝た女がさぞかし褒めるんでな、試してみようかと」

「マジかよ!? 意味わかんねェよ!?」


 がくがくと揺さぶってもレイリーは笑うばかりだ。おれは頭を抱えて、枕に顔をうずめているとそのうちに笑い声が止んで、とんとんと肩を叩かれた。顔を上げる気にはなれない。軽く振り払ってもしつこく叩いてくるものだから「なんだよッ」と顔をあげたら、思いきりキスされた。振りほどこうと思ったころには時すでに遅し。ごくん、とおれの喉がなる。慌てて突き飛ばすがレイリーはニヤニヤ笑っている。


「お前……何飲ませた?」

「ん? 気持ちよくなれるおクスリさ」


 もう一回戦行こうか。血の気が引いたが、すぐに薬が効いてきたのか身体があまり言うことをきかない。まるで目の前のレイリーがとても魅力的な人間であるように見えてくる。クソが。悪態をついてみてもレイリーからは逃れられないようだった。

君が笑って過ごせる日々を夢見てたのです、のレイリーと主人公の若かりし頃。どんな距離感なのか気になります@匿名さん
リクエストありがとうございました!


mae:tsugi

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