「おいロシー、なんのつもりだ」


 どうしてかぴったりと張り付いてくる弟、ロシナンテは今日は一度もドジを起こしていなかった。声をかけてもじろりとドフラミンゴを見てくるばかりで、何も言ってこない。今更声の出ないふりでもしているのだろうか。ため息をついてもぴたりと張り付いてきて、グラディウスが何かお小言を言っても気にしないあたり、ハロウィンのドフラミンゴの行動から学習しているらしかった。何を思ったのか、ナマエを守ると意気込んでいるようなのだ。これだから正義感の強いやつはとドフラミンゴは苦い顔になってしまった。
 今日のところはクリスマスパーティーも終わり、片付けはまた明日にでもやればいいだろう。あとはシャワーを浴びて眠るだけだ。クリスマスなんだからちょっとくらいいいだろう。──というような雰囲気なのである。邪魔をされてたまるか。


「ナマエ、このあとの予定は?」


 ぴたりと張り付いてくるロシナンテを交わし、ナマエに話しかける。プレゼントがあると誘って部屋に連れ込めばこっちのものだ。あとはどうとでもなるだろう。多分。おそらく。きっと。しかし予想もしてなかった答えが返ってきた。


「悪いなドフィ、おじいちゃんは今夜も明日もチビたちと、おれと、一緒に寝るんだ」


 それも、ナマエからではなく、ロシナンテからの言葉だった。おれと、の部分を強調しているあたりに悪意のようなものを感じる。ハロウィンの一件で本当に学習をして先回りをしておくことを覚えたらしい。子どもがいればナマエは何も疑うことなく、喜んで一緒にいてくれることだろう。
 思わず「んだと?」と低い唸り声を出してしまうと、ナマエの朗らかな声がドフラミンゴの耳朶を打った。


「ふふ、サンタを一緒に捕まえるのさ」

「……サンタ、ってあのサンタか?」

「捕まえてプレゼントを奪うだすやん!」

「おい、他の子が困るからやめてやれよ……」

「コラさん、海賊なら奪うものよ」


 海賊相手に場違いなことを言ったロシナンテにべビー5が正論を説いている横で、「サンタなんていねェ」とローが言っている。夢のない言葉を発してはいるがどこかそわそわしているところを見ると、内心一番楽しみにしているのはローなのかもしれない。既に半分寝てしまっているデリンジャーはロシナンテに背負われたままこくりこくりと揺れている。


「ドフィくんも一緒にどうだい?」


 こんな子どもたちからナマエを奪えまい、と思っていると、ナマエがドフラミンゴにそう言った。子どもたちもドフラミンゴという戦力が追加されることに本気で喜んでくれているようだった。ナマエがドフラミンゴに顔を寄せてきて近い距離にドキリとしてしまう。こっそりと「サンタ役はセニョールくんに頼んであるんだ、ああ、本当に捕まえちゃダメだよ」と教えてくれた。どうやら息子さんにもやるみたいでね、という笑い声が耳に心地よい。
 顔を寄せている二人に、ロシナンテも緩く笑っていた。子ども四人と、弟と、ナマエ。まあ、今日のところはそれで我慢してやろう。


「フッフッフ、じゃあ本気で捕まえに行くか」


 ドフラミンゴの本気宣言に、子どもたちは喜び、ロシナンテとナマエの大人ふたりが固まる。本当に捕まえないよね、とこそこそ心配そうに話している。その光景にドフラミンゴが大声で笑った。

若誕『誰もが優しくなれる』の世界で、聖夜という事で甘く熱い夜を過ごしたいドフラミンゴと全力で阻止するコラソン。何も気付かず、無邪気な年少組とほのぼのしたりしている主人公。@匿名さん
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