!ストレートな下ネタがっつり 「英語なんて死ねばいい」 「生命じゃねェ学問に死ねって言ってる時点でお前の頭の出来が知れるってもんだなァ。それか一周回って賢いってとこだが……お前にそれはねェな」 「些細なことに突っ込むと嫌われるよ、ドフラ先生」 「英語12点のお前の方が嫌われるぞ、デケムくん」 ああ言えばこう言う、を素で実行してくるドフラ先生ことドンキホーテ・ドフラミンゴ先生はいわゆる英語教師だ。そしておれの受け持ちの先生でもある。補習を受ける羽目になったのはおれ一人だけだったので、多大な迷惑をかけているという自覚はあるが、どうにもこうにもこうした軽口は止まなかった。それほどおれは英語というものが苦手なのである。 母国語しゃべれるんだからいいだろ別に……死にやしねえってのに。数学も物理もまた然りだ。化学はなんとなく実生活で使いそうな気がする。洗剤の選び方とかで。そう考えるともしかして物理も使うのか? 坂転がり落ちたときとか。使わないか。まあ国語とか社会とかは最低限必要だとして、体育とか家庭科とか技術とか、そういう実技科目を増やすべきだ。そうしたら生活には困らない。多分。 「英語なんかなくても生きていけるっつーの」 「お前の人生をワンランク上に引き上げてやろうっていう教師の厚意を受け取りやがれ」 「厚意の押し付けはよくないよ」 「いいから教科書開けクソガキ」 「あいあいさー」 ドフラ先生はおれと軽口を叩きあってくれていたが、時計をちらりと見てからおれに教科書を開くように要求してきた。先生にも色々やることがあるんだろうに、なんか申し訳ない。申し訳ないのだが……おれは英語を見ると眠くなってくる性質でな……ドフラ先生のいい声聞いてたら、そっこう、おやすみ、もーど……だ…………。 バシンッとすごい衝撃が頭の上から聞こえてきて、おれは慌てて飛び起きた。ら、目の前に青筋を立てたドフラ先生が立っていて、おれの耳をぎりりと抓んだ。 「いってェ!! いでェ! いてェってば!!」 「痛くしてやってんだろうがよ! デケム、てめェ静かにできたと思ったら五分も経たずに寝やがって……」 「だってドフラ先生いい声だし英語わかんねェし眠ィし、もう寝るしかねェかなって」 「前二つは許してやってもいいがなんで眠ィんだお前」 「昨日はエロ動画漁りが盛り上がって夜遅くま、いっでェ──!!」 正直に話したらこのありさまである。思いっきり引っ張られた耳が痛い。たぶんドフラ先生はおれの耳をもぐ気でやったと思う。それくらい痛かったし、なんならすこし耳の付け根からちぎれたかもしれない。マジで引くくらい痛い。 でもドフラ先生の血管の方がブチ切れそうになっていたので、文句を言うのはやめにした。これ以上怒らせたらドフラ先生死んじゃう。英語は嫌いだけどドフラ先生自体はノリがいいし、楽しいし、本当にいい先生だと思うから好きだし、死んでほしくはない。ならもっといい子にしろよって話なんだけど、英語に関してはマジで無理だった。 「……今日おれの補習があるって知ってたよなァ? なんで前日にそんなことしてやがる」 「健全な男子高校生なんだからしゃーなくない?」 「…………」 「あ゛!! ごめんなさい!! もうやめて!! ちぎれちゃう!!」 もうおれの左耳のヒットポイントはゼロになりかけている。このままだと本当にちぎれちゃうから勘弁してほしい。半泣き気味の説得が効いたのか、ドフラ先生は手を離してくれた。溜息をついていたので諦めたのか悟りを開いたのかもしれないけれど、とにかくこれ以上耳が痛めつけられなくてよかった。 「わかった。黒板使ったおれが悪ィってことだな」 「おれちょっとその意味わかんない。ドフラ先生は悪くなくね? さすがにおれ責任転嫁するつもりないよ」 「いや、お前の馬鹿さ加減を考えなかったおれが悪い」 なんだろうか、責められているわけじゃないのに涙が出そうになる。この涙が感動じゃないことだけはたしかだ。つらい。 ドフラ先生は黒板を適当に消したあと、教科書の類をすべて持っておれの席の前に座った。何某の席だ。いやそうじゃなくて。えっ。おれの机の上にドフラ先生の腕が乗って、教科書を指さしてくる。 「とりあえず、ここ訳してみろ」 「えっちょっと待って」 「お前が馬鹿なのはわかってるから待ってやるに決まってんだろ」 「いやそうじゃなくて! この位置やめね!? 近い!」 こんなの絶対集中できなくて結果怒られんじゃん! えっ、ドフラ先生はおれに嫌がらせしたいの? 違うよな? おれの言葉が理解できなかったのか、また怒ろうとして耳をつかもうとしてくる手を慌てて避けて、ふわっとドフラ先生からいい匂いがして変な顔になる。なんなんこの人! おれがそんなふうに思っていると、ドフラ先生も似たような顔をしていた。いや、何やってんだこいつぶち殺すぞくらいまで行ってたから似たような顔ではない。 「もう少し離れてよ〜。おれ頑張るから〜!」 「フッフッフ……意味のわからねェこと言ってんじゃねェ。いい加減にしねェと、」 「だから! いい匂いするし! むらっと来るからやめてって!」 「…………は?」 「仕方ねェじゃん。おれいま彼女いねェし、男もイケるんだもん」 ドフラ先生はあんぐりと口を開けて驚いていた。あれ、知らなかったんだ。おれがバイだっていう話、うちの学年ではかなり有名な話だと思っていたけどもしかして自意識過剰ってやつ? ドフラ先生は口元に手を当てて何かを考えているようだった。もしかしておれのことを考えてくれてるの……!? どきん! なんていうふざけた感じは冗談だとしても、勢いよく身体を離してどん引いたりしないあたり、先生はとても出来たいい人だと思う。男も平気だよって言うとたいてい友達やめてくやつらばっかだからな。誰がお前らなんかにちんこ勃つかっての。おれにも選ぶ権利はあんだよ。 「デケム、テストでいい点取れたら相手してやってもいいぜ」 おれがしょーもないことを考えている間に、ドフラ先生の中では何か重大な決断が行われたようだった。なんだそのエロ本で見たような展開は。夜の個人レッスンとかいうやつ? ここでおれは、自分にそこまでの価値があると思ってんの、とか、バイで今彼女いないからっておれのこと馬鹿にしすぎでしょ、とか、色々言っても許される言葉はあったと思う。だけどおれの口から衝いて出た言葉はこちらだった。 「マジで!! 何点から!?」 男子高校生の性欲とはそんなものである。だってドフラ先生いい匂いだし、好みの体つきだし、顔も整ってるし、いい声してるし、舌がなんかえろいし、拒否る理由が一個もない。ここで頑張らないでいつ頑張んの? あまりにも現金な態度にドフラ先生は腹を抱えて笑っていたが、笑われたって先生抱けるなら全然かまわないし。どうにか笑いをおさめた先生は指を九本立てた。……九本……だって? 「9点、」 「90点だ」 「難易度高すぎない? 12点の人間が目指せるところ超えてるよね」 「ならこうする。80点で手コキ、90点でフェラ」 「ぐッ……100点だったら!?」 80点なら目指せるような……いやでも手コキされるだけとかむしろ地獄じゃね? フェラとかもうれしいけど、中に突っ込ましてもらいたいに決まってる。おれは無理矢理とか好きじゃないし、同意を得られないとちょっと困るし……。 おれが呻いていると、ドフラ先生はおれの耳に口を近づけて、そっと囁いた。 「好きにしていいぜ」 「頑張ります!!」 でもまあよく考えてほしいんだけどね、12点のやつが80点なんか取れるわけなくてですね? まず80点を取るまでの苦難が始まるとはこのときのおれは考えもしていなかったのだった……。 イヌの躾と一緒です 学パロの英語教師ドフィに英語ダメ過ぎるDKが(オトナな)個人レッスン受けるシチュエーション@匿名さん リクエストありがとうございました! |