なぜか今おれの前にめっちゃ美人のおねえさんがいる。金髪碧眼ボンキュッボンのわかりやすいえろてぃっくおねえさんだ。前世のおれは金髪の外人さんをオカズにしたことはなかったが、おそらくこの世界では平均的なえろてぃっくおねえさんだと思う。なんだろう、めっちゃいい匂いする。


「あら、こんなところに子どもなんてどういうこと?」

「そっちこそ」


 ここはどこかと言いますとー、ドフラミンゴのー、アジトなわけでー? 娼婦ってやつなんだろうか。それともドフラミンゴがお持ち帰りしたおねえさん? どっちにしてもあだるてぃっくな匂いがしてドキドキしちゃう! おれだって男の子だもんね!
 ……自分でやってて気持ち悪いな、やめよう。AVにお世話になったっていうよりも二次元エロゲエロ漫画にお世話になってた類の人間だから、正直このおねえさんがあはんうふんになってもそんなに興味はない。二次元が……現実になるってのは……悲しいことなんだよ……。現実になった二次元なんてな……なんの意味もないものなんだよ……。トリップしたって何もいいことなんてないんだよ……???
 おれがそんなふうに前世からの知識のせいで落ち込んでいると、おねえさんはじろりとおれを見下ろしてきたくせに途端にニッコリと笑みを作った。なんていうんだろうな、まさに作り笑い? 元オタクの引きこもり系男子はそういう表情の変化には敏感なんだよ?? 古傷抉られるからやめてくれます??


「ねえ、お嬢ちゃん?」

「おとこ」

「あらそうなの? 可愛いからわからなかったわ」


 どうも、くりくりぱっちりおめめとロング睫毛が特徴のカワイ子ちゃんことデリンジャーです。どっちかっていうとそれは半魚人だからだけどな! 大人たちから可愛がられて生きております!


「それであなた、ここの子ども?」

「ここ?」

「……ドンキホーテファミリーの所属って聞いてるのよ」

「そうだよ」


 なんかこの女きな臭いな。もしかしてドフラミンゴの命狙ってる系の暗殺者とかじゃないよね? こんな簡単におれに見つかったりしてる女がまさか暗殺者とかじゃないよね? 中二病患者が憧れる暗殺者がお粗末なこの女じゃないよね?????
 じろりと見上げてみると、女の笑顔がすこしだけゆがんだような気がした。まあなんていうの? おれのおめめは結構死んだ魚の目でハイライトなかったりするから、結構気になっちゃったりするよね?


「デリンジャー、そいつと何してんだ?」

「どふぃー」


 まだ若様は難易度高いんだ、呼び捨てで勘弁してくれな。ドフラミンゴをおれを抱え上げてフッフッフといつものように笑っているし、おねえさんにも親しげに話しかけている。なんか気にしてたけど、もしかして刺客とかそういうんじゃないのか。失礼な勘違いをしてしまった。


「どふぃ、おれ、ろーと、あそんでくる」

「ん? そうか。巻き込まれてコラソンに蹴られねェようにな」

「おれ、こらそよりつよい」

「フッフッフ! そうかもしれねェな!」


 ドフラミンゴはそう言いながらおれの頭をいい子いい子してくれたので、完全に子どもに対するお世辞だったが、もしかしたら本気でおれの方が強いんじゃないかと思うときがある。それくらいあいつドジだからな。おれは最後を知ってるのにそのうちうっかり死ぬんじゃないかと不安になるくらいだ。
 おれはドフラミンゴの腕から飛び降りて、もう一度おねえさんを見た。おねえさんはすこしだけ怯んだように見えたが、にっこりと笑ってくれた。やっぱりいい匂いがする。なんだったかな、この匂い。あれ。ちょっと待て。……これって、


「ちのにおい」

「えっ?」

「おまえ、ちのにおい」


 レアの肉と同じような匂いだ。あるいはローやベビー5が血を流しているときのような匂いだ。とても新鮮な、血の匂いだ。女だから特有の血の匂いがする、ってんじゃない。そういう女の匂いはこの身体になってから嗅ぎ分けられるようになってしまったが、あれはいい匂いじゃなくて普通に嫌な臭いなのだ。でもこれは違う。
 お前、どこで血をひっかけてきた? ……はっ!? それともドフラミンゴとハードなプレイをしてどこかに傷を!?
 おれがせっかくシリアスをぶち壊して下ネタに走ったというのに、目の前の女は手を服の中に突っ込み、おそらく武器でも取り出そうとしたのだと思う。でも目の前にいるドフラミンゴがそんなこと許すわけなんかなかった。まず腕がすっぱーんと飛んだ。女は悲鳴を上げて床でのたうち回る。うっわ、廊下が血で汚れる……ばっちい。


「お前どこのもんだ? 何しに来た? ん?」


 糸で女の身体を拘束しているのか、ギリギリとすごい音が聞こえてきた。ドフラミンゴ、それ外でやってもらえないかな? このままでは廊下がホラーゲームさながらの血塗れ廊下になってしまう。おれは血とか肉は好きだが幽霊系のホラーは苦手だ。肉弾戦で倒せるやつは、今ならそんなに怖くないんだけどな……たぶんもうちょい大きくなれば普通に殺せるだろうし。この状況でそんなことを考えられちゃうあたり、おれも随分染まったなァと思う。いまや立派なギャングです。
 とかなんとか思いながら〜、ドフラミンゴの拷問を〜、見てたんですけど〜。ジャギンッと拳銃がおれに向けられた。いつでも引けるぞとばかりだが、おねえさん、それは悪手です。ドフラミンゴを見ながら、おれに警戒もせず、こっちに銃を向けてるなんて、ねえ?
 ぐっと足に力を込めると、いい感じのスピードでおねえさんに迫れた。そしてそのまま、腕をつかめばおねえさんの細腕はバキバキである。思わず痛みで拳銃を離しちゃったよね。しばらくはもう握れないだろうから放っておいてもよかったはずなんだけど、きらきらと綺麗に光る爪が綺麗でつい、こう、ついね? 美味しそうに見えて出来心でその指を噛みちぎってしまったのだ。


「う、ああ……ッやめろッ! ぎゃあああああああ!」

「うべっ! まず!!」


 ちょっと待ってwwwwww予想外にまずいwwwwwひえっwwwwwうっうぇwwwwwゲロマズwwwwwひいwwwww ないわ。

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 騒ぎを聞きつけてきたグラディウスに運ばれ、口の中を綺麗に濯がれ、あんなものを食べてはいけないと叱られた。アレだよね、グラディウスってさ、子どものために率先して叱ったのに怖がられちゃうタイプ。ドフラミンゴは褒めたり甘やかしたりして美味しいところをかっさらってくタイプ。
 それにしても本当にマニキュアはまずかった。別に乾いてなかったわけでもないはずなのに……これからは気をつけなきゃならんな。でも待てよ、逆に考えたらおれの指をマニキュアで彩るのはありかもしれない。毒々しい色合いなら他の動物たちも食べようだなんて思わないし、仮に噛みちぎられてもすぐに出してもらえればくっつけてもらえるかもしれない。あっこれマジ名案だわ!


「聞いてるのか!?」

「まにきゅあはこうかてき」

「……聞いてねェんだな?」

「……」


 バレてしまったようだな。ここからグラディウスが完全おこモードになってしまい、おれを何時間も怒り続けるかと思いきや、なんとそこにドフラミンゴがやってきたのだ。しかもさっきの女を無効化したことを褒めてくれた。もっと褒めてくれてもいいんだぜ、とドヤ顔してしまった。そうしたら頭をぽんぽん撫でてくれたので、おれは『(*'ω'*)』こんな顔だった。いやもう……褒められて嬉しかったんだよ……。
 おれがそんな顔をしている間に、頭上ではグラディウスとドフラミンゴの大人な会話が繰り広げられていた。どうやら身体にお話を聞いたところ衝撃の事実がわかったようだ。


「あいつは殺し屋だったぜ、しかもあれで男だった。雇ったやつは吐かせたから後の処分は任せてもいいか?」

「勿論です」

「おとこ……!?」


 あ、いやたしかにおれが指を噛み切ったとき、野太い声出してたな。もともとどんな顔か知らないけど、人間ってあんなに変わるんですね。人間って不思議だな……もう女を信じられなくなりそう……。イワンコフとかもそういう感じだもんな。ドフラミンゴはおれの驚きの声を拾ってくれたようで、しゃがんでくれたあとおれの頭をまたぽんぽんしてくれた。


「驚くのも無理はねェ、おれにも女にしか見えなかった……女だからと油断してたかもしれねェな」

「どふぃも、ゆだんする?」

「ないとは言い切れねェ。だからデリンジャー、お前の嗅覚には助かったぜ。ありがとな」


 や、やめろ! これ以上いい子いい子するんじゃない! そんなことされたらまたおれの顔が……!!(*'ω'*)


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