負けた青峰



負けたと解った瞬間、ほんの一瞬だ、頭ん中は空っぽになって回りの音も全部消えて、あいつの顔が浮かんだ。ほんとに一瞬だ。その後はすぐに全部戻ってきて、歓声とか、汗だくで笑ってるテツとか、そういうのが飛び込んできた。

全部終わった後で、集まりも何もすっぽかして外のコンクリの階段の所で寝転がって空を見ながら、ずっとあいつの事考えてた。負けたって言ったらどんな顔すんだろうな。いや、多分、あっさりそっかって言うだけか。――そもそも何であん時、負けたって解ったあの瞬間あいつの顔が浮かんだんだ?そんで、何で今こうやってあいつの事ばっか考えてんだ俺。意味分かんねーわ。
…今電話したらどうなっかな。って、いやいやだからそうじゃねぇっての。



そこに、さつきがやって来た。戻れってうるせぇ。だからずっと無視を決め込んでたら、しょうがないんだからもー、なんて眉を下げて笑ったのを横目に見る。その苦笑いの顔は勿論あいつのとは全然違って、あーあいつのがいいな、とか、思う、俺が居る。何となく、思う訳だ。これがつまり、そういう事なんじゃねぇかって。



「あのよぉさつきィ。負けたって解った瞬間な、」

「、…うん」

「何か、顔が浮かんだんだよな」

「え、…誰の?」

「神谷」

「………そっかぁ」

「これ多分さァ、あいつが好きとか、そういう事だろ?」

「…そういう、事なんじゃないかな。大ちゃんはどう思ったの?」

「…。…さつきィお前先戻ってろ、後から行くからよ。あと携帯貸せ」

「………絶対だからねー?ちゃんと来てね?」

「はいはいさっさと行け」



さつきのにやにやしたくそうっぜぇ顔をシカトして携帯を受け取り、アドレス帳を開いた。足音が遠ざかっていく。あいつ、出っかな。出てほしーな。まぁさつきの携帯から掛けんだし出るか、ちゃんと。





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