寝惚けてる狡噛
…あ、慎也クン寝てら。
無断で入った部屋の1つだけのソファーへ、そろっと近付いてしゃがみ込む。この男の事だから気配で目を覚ましそうなものだが、起きそうにないところを見るには余程疲れているのだろうか。精悍な顔を近い距離から眺めて、立ち上がり、一挙。寝そべる体の上、腹の辺りに跨った。
「ぐ、」
「…」
「…な、んだ…、?…漣か」
「おっは」
「何してる…」
「慎也クンて気配で起きそうなのに、何かそうでもないよねぇ」
腕を使ってのそのそと起き上がる慎也クン。その動きに合わせて筋肉の収縮した腹部の恐ろしく固い事と言ったら。小首を傾げてそう零せば、元々刻まれていた眉間の皺が深くなる。しかし次の瞬間にはふと緩んで、ついでに何か面白そうに笑っていて。…何ぞ。今度は此方が眉を顰める番である。
ゆったりと、それでいてがっちりと腰元に絡んだ腕。密着した体から熱が伝い合った。がぷ、と唇に噛み付かれる。柔い肉で食まれた後、まずは離れていく――流れるように首を這いながら。
「…お前だからな」
「…慎也まだ寝惚けてる?」
ふ、と笑う音がした。