ギルとレン
「お疲れ様デース」
「おー。何とも見計らったようなタイミングだこって」
「見計らいましたので」
「ははは」
「本気出してないってのはその通りだけど、私的には、バトルらしいバトルしてんなーって」
「ま、だろうな」
「流石にアーヴィンはそうもいかなかったみたいだけど」
「あぁ、悪い事したなとは思ってる。選定に基準設けて仕方無かったとは言え、俺の"やり方"に馴れてきたところにこれだもんなー、そりゃぎこち無くもなるってーの」
「ヌメルゴンの鳩尾に頭突きしたアレ、完全に素だったしね」
「まぁあれくらいならいいかと思って。アーヴィンも多分無意識だったろうしな、わざわざ止めてまで抑える必要もねぇだろうさ」
「帰ったら特にご褒美あげないとね」
「ん」
「で、この後は?」
「特には。ま、せっかく久々に正装してまで来た訳だし、もうちっと居座るかなとは考えてるが。…これも久々に、俺とバトルしてみるか?シャトー仕様で」
「…うーん………中々悪くないお誘いではありますね」
「でしょう」
「――ん!やる!あ、でももうちょっとくらい本気出してやってほしい。あと私もポケモン替えてくー」
「おう。じゃ、取り敢えずエントランスホールまでは一緒に行くか。俺もこいつら回復させねぇとなんねぇし」
「うす!」
「お前も強くなったもんだよなぁ」
「嫌味か。それは嫌味というやつか。おい」
「おいおいまさか。純粋な感心だって」
「ケッ。…でもまぁ、デイオウでアーヴィン戦闘不能に追い込めたのは嬉しかったな」
「ん。おめでとう」
「ありがと」
「あとはアレだ、セタとゲルトの燕返しの応酬。正直アレ、お前意地になってたろ」
「人の事言えないじゃないですかおにーさん」
「いや、うん。俺も多少意地にはなってましたケド」
「相打ちで押し負けちゃったの悔しかったデス。ゲルトがちょっとだけ態勢崩したあの時にシザークロスで斬り込ませてたら良かったのかなーとは思う」
「あー。そっちのが威力高いしな。それやられてたらゲルトが先に落ちてたかもしれん」
「くっそー」
「――さて、じゃあ行くか」
「うん。…うん?」
「実はレストランに予約入れてたりして」
「マジですかギルさん」
「マジですよレンちゃん。お前が付いてこなかったらそっちで合流するつもりだったが、連絡する手間が省けた」
「うわー正装してレストランとか初めてだ。この恰好が浮かないとこなんだ?」
「おう、ズミんとこだから。しかも個室」
「おー!すごい!ズミさんのレストランで個室とか太っ腹ー」
「ま、せっかくの機会だしな」
「ゴチでーす」
「いつもだろ」
「いつもゴチでーす」
「はいはいゴチしてやってまーす」