貴族の館



『――ようこそおいでになりました、マドモアゼル。お初とお見受け致します。此処、バトルシャトー、この貴族の館の事はどの程度ご存知に?…左様にございますか。それではわたくし、このピエールが、僭越ながら案内人を務めさせて頂きます。さぁ、まずは此方へ』


『バトルシャトーでは、品位と礼節に重きを置いております。ですから、シャトー内へは、基本的には多少ドレスアップをなさってからお越し下さるようお願いしております。勿論、お越しになる方々の中には已むを得ぬ事情というものをお持ちの方もいらっしゃいます。或いは、マドモアゼルのように、旅をなさっている途中にふらりと立ち寄られた方なども多々。シャトーでは、そういった方々も問題無く在られるよう、比較的安価な料金にて衣装を貸し出しております。――さぁ、此方になります。中にはメイドが控えております故、どうぞごゆっくりと、気兼ね無くお着替えになられておいで下さいませ』


『――嗚呼、お綺麗になられまして。よく似合ってらっしゃいます、マドモアゼル。…さぁ、それでは、次は此方へ。貴女様のご来訪を記録致しましょう』


『爵位、というものはご存知に?…あぁ、いえ、いえ、お恥じになる事など全く。普段関わりの無いものにございますから、ご存知無いのも致し方有りません。何せ使用人の中にも、此方へ来るまでは知らずにいた者も居ります故。――爵位、というものは、栄誉称号にございます。細かく分ければ中々に多くの爵号が存在しますけれども、このシャトーにおいて挙げられているのは主に6階級となります。そして此処、バトルシャトー。ポケモンバトルによって、上級の爵位を手にする権利の争奪を行う場にございます。幾つかの例外を除きましては、皆様誰しも最下級爵位男爵位より始めて頂く事としております。…マドモアゼル。貴女様はこれよりバロネスとして、どうかご自身に恥じぬ振る舞いと、そして誉れがためのポケモンバトルをなさりますよう』


『さて、トレーナーカードをお出し下さいませ。…ありがとうございます。ではこれよりリストにその名を加え、貴女を正式にバロネスとして記録致します』


『上級の爵位を得るには、同級もしくは上級の爵位を持つ相手とのバトルで10連勝される事が条件となります。しかし、バトルを申し込み、相手方がそれを了承し、実際に城外のバトルフィールドへ立つまでは、相手方の爵位は分からぬ状態となっております。勿論、ある程度長くお越しになれば、自ずと、顔を憶えたりそれと無く判るようにもなられるでしょう。ですが初めの内は、相手方の爵位とそれに見合う実力に恐れる事無く、ただただバトルを申し込みなさるのが最良にして最短かと』


『バトルフィールドへお立ちになられる際には、此方で用意しております外套を羽織って頂く事となります。実に勝手ながら、お着替えの折に此方でサイズを計測させて頂きました。丁度良いサイズの外套を用意致しますから、どうぞご心配なさらずに。…さてこの外套ですが、これの色によって爵位を知らしめる形となります。白、青、緑、黄、赤、そして紫。最下級爵位男爵位には白が、その上級爵位子爵位には青が…伯爵位には緑、侯爵位には黄、公爵位には赤。こう、と付く爵位2つは音ではどちらがどちらであるか判別が難しくありますけれども、実際にお呼びする際は全く異なっておりますからご安心を』


『最上級爵位大公位の外套は、それ以下の爵位のものとはデザインが多少異なっております。男性の大公位はグランデューク、女性の大公位はグランダッチェス。大公位をお持ちの方は、大変、大変お強く在られていらっしゃいます。故に、大公位をお持ちの方の数は極めて少なくありまして、現在リストに載っていらっしゃるのは、グランデューク・グランダッチェス共にたった1名のみ。一体誰であるか、一体何者であるかは、どうぞご自分の目でお確かめ頂きたく思います』


『先程、同級以上の相手とのバトルで10連勝される事で、上級の爵位をお手に出来ると申し上げました。ここで、相手にバトルを申し込んだは良いが、蓋を開けてみれば相手は下級の爵位であった、という場合。もしそのバトルが敗戦に終わってしまったとしても、連勝記録に支障が出る事はございません。ただ相手の連勝記録が1つ上向くのみとなります。…また、上級の爵位を得れば得る程、当然同級以上の相手に巡り合う事も少なくなって参りましょう。金より時間が惜しい、効率的に同級以上の相手へバトルを申し込みたい。そんな方には案内状、もしくは挑戦状というものを提供しております』


『この案内状と挑戦状、申し訳無いながら利用に多少の金額をお支払い頂く事となっております。ですがこれによって、確実に同級以上の相手へとバトルを申し込む事が可能となります。指名の有無は問いませんから、どなたかご存知の方がいらっしゃるのであれば指名して送る事も可能となっております。但しご留意頂きたいのが、どちらにもランクがございまして、当然高ランクの書状、つまり送る相手の爵位が高くなれば高くなる程掛かる金額も高くなるという事と、そして送る事の可能な書状のランクは有する爵位によって変動するという事にございます。現在男爵位の貴女様はその1つ上の子爵位相手へのみ書状をお送り頂けますし、大公位相手への書状をご所望であればまず公爵位にまで昇り詰めて頂かなければなりません。それから、書状には必ず自筆のサインをして頂きます。その旨どうかご了承下さいませ。…あぁ、失念しておりました。案内状と挑戦状に然したる違いはございません。ある程度高いランクになりますと、呼び方が変わるというだけにございます』


『此処バトルシャトーでは、チェックイン・チェックアウトの体制を採り入れております。ですから例えば貴女様が書状をお出しになられた際、もし該当する爵位の方が城内にいらっしゃれば即座にお声掛けして書状の旨をお伝えしますし、そうで無かった場合にはリストよりどなたかへ書状をお送りして、後程お越しになられたその方とバトルをなさって頂く事となります。そしてそのどなたかがお越しになられるまでの間につきましては、小休憩されるも良し、他のどなたかへバトルを申し込まれるも良し、どうぞご自由になさって下さいませ。使用人へ申し付けて頂ければ、食べ物や飲み物もご用意致します故、どうぞお気兼ね無く』


『――さて、その他何か申し上げておくべき事としますれば…そうですね。バトルの申し込みは単にお声掛けも結構ですけれども、より相応しく、より場に則って頂けるのであれば、此方の白手袋を、バトルを申し込みたい相手へ呼び掛けて頂いた後、その方の前へと放って頂ければ』


『何か不明な事は、いつでも使用人共にお訊ねを。それから城内に多数ございます小部屋ですが、その多くは立ち入り自由となっておりますから、ご自由に、ごゆるりとお過ごし下さいませ。パソコンの利用をご所望でしたら、この先、手前右手の扉からコンピュータールームへどうぞ。また、館の開門は朝の9時、閉門は夜の11時となっております』


『――重ねて申し上げますけれども、バトルシャトーでは、品位と礼節に重きを置いております。マナーやルールといったものを此方からとやかく申し上げる事はございません。どうか、ご自身に恥じぬ振る舞いをなさって下さいませ、マドモアゼル』


『さて、さぁ、新たなる男爵様。このピエール、貴女様の誉れ高きポケモンバトル、そしてご健闘とご邁進をお祈り申し上げましょう。――Bienvenu au "Battle Chateau", mademoiselle!』





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