ギルとレンとフクジの孫娘
「(し、閉まってる…?!!!!どっどうする私?!!!!)」
「――お嬢さん、おろおろしてどうしました?」
「?!!!!…あっえっえと、あのう、その、少し話がしたいから仕事が終わって上がったらまた来てくれって…あっ私ついこの間からデルナ花店でアルバイトしっ、てまして、それでその、今日お花をお届けに上がって、それでっ、」
「あはは、焦らなくていいですよーはい、深呼吸」
「、うっ、あ、すー…はー…」
「まぁ何と無く事情は分かりました。取り敢えず中に――あ、来た」
「え、き、来た…?」
「――何だ来てたのか。悪かったな、クローズドになってても開いてるから入ってこいってちゃんと言っとけば良かった」
「ほんとにねー。おにーさんの配慮ミスのせいで彼女すごいおろおろしてたよ」
「はいはい完全に俺のせいですよ。…よ、サクちゃん。こんばんは、いらっしゃい」
「こんっ、ばんは、」
「さぁどうぞ中へ。あーでレン、スティックシュガー切れそうだから買ってきて」
「今来たばっかなんですけどね」
「ほらまだ中入ってねぇしノーカンて事で」
「クソ野郎」
「ひっでぇ。後でご褒美やるから」
「ご褒美?報酬の間違いでしょ」
「ソウデスネ」
「――さて、何飲みたい?」
「あ、えと、何でも…」
「なら、アレだな。フクジ翁から貰った茶葉まだ残ってるからそれで紅茶でも」
「…?!」
「キミも飲んだ事有ると思うよ」
「、そっそうだあの…!」
「うん。何で名前知ってるのかって?」
「はっはいっ」
「フクジ翁がな、ソノオから孫娘がミアレの花屋にバイトと、それだからこっちに1人暮らししに来るんだって言ってたから」
「お、お祖父ちゃん何でそんな…!」
「まぁそれは前置きの一部だったんだが。で、フクジ翁の本題イコール俺の本題でもある訳でだ」
「!はいっ何でしょう!」
「蜂蜜、集めて瓶に詰めてるんだって?」
「………!!あっはいそうです…!!」
「俺も飲食に関わってる人間だからよ。ちょっと気になって、もし良ければ味見させてもらえないかと思ってね。それでいいなと思ったら、是非買い取らせてほしいんだが」
「……………」
「駄目、かな?」
「………ッ!!!!…っあ、どっどうしよう今持ってないどっだっ取ってきま、すか…?!!!!」
「、あ、いや、次とかまた今度とかでいいぞ、っ、ブフッ」
「?!!!!なっ何で笑っ?!!!!」
「ふ、くく、…はは、いや、すげぇ、何、慌ててっつーか、興奮してっつーか、面白くて、ごめんごめん」
「…っ!…っ!だっ、て、しょうがないじゃないですかあんな事言われて…!!!!」
「だからごめんて。…、あはは!」
「あああああもおおおおお笑うの止めて下さいよううううう」
「はいはい買ってきましたよーっとさて報酬は何処デスカ」
「これはこれはどうも、お疲れ様でした。残念ながら報酬は少々お待ち下サイ」
「追加報酬戴きますけどー」
「ほんとがめついなーお前」
「当然でしょ!時間外労働ですもの」
「…仲、いいんですね…?」
「まぁねー。…あ、そうだ自己紹介まだだった。私レンね、貴女は?」
「!わっ私はサクと言います!えと、レンさん!ですね!」
「サクちゃんねー了解」
「お前より4・5歳下」
「えっマジで」
「サクちゃん15か16なんだろ?」
「えっ何でそれっあっもしかして、」
「フクジ翁情報」
「お祖父ちゃん…!」
「へぇ!フクジさんのお孫さんなんだ?」
「あ、はい!」
「そっかー。デルナ花店でバイトしてるって言ってたけど、え、何処出身――」
「えと、じゃあ、ご馳走様でした!…あのう、ほんとに代金、いいんですか…夜ご飯まで出して頂いちゃって…」
「要りません。俺の奢りです」
「この人が奢りだって言ってるんだからいいんだよーそういう時は素直に奢られときなさい。それに話し込ませちゃった訳だしね」
「はい…ありがとうございます。…あ、その、また来てもいいですか…?」
「勿論いつでも。まぁウチは結構不定期だから、タイミング悪かったらそん時は残念、だがな」
「はい!…それじゃ、えと、また今度!蜂蜜、とびきりいいやつ持ってきます!だからその、ちょっとだけ時間掛かっちゃう、かも、です…」
「おう、楽しみにしてるよ」
「レンさんも、ありがとうございました。お店の前で挙動不審だったのに…」
「いーえ、どう致しまして」
「じゃあ、また!お邪魔しました!」
「はーいまたねー」