ライモン4人組



巷ではトレーナー廃人施設などと呼ばれるのが、バトルタワーやバトルフロンティアといった場所である。そして、イッシュ地方ライモンシティに構えられたバトルサブウェイ。これもその内の1つだった。
サブウェイ、と言うからには、きちんと公共交通機関である地下鉄としての側面も持っているのがこの施設だ。むしろそちらの方が先立って造られたものであり主要である。後付けに増設・併設となったのがバトルサブウェイ、その路線なのであった。通常の地下鉄・電車と大差無い利用法、つまり切符や回数券・定期券を用い、ホームで列車の発着を待つ。そうして乗り込んだ車内、ガタンゴトンと揺られる中で、至って普通の様式でバトルを行うのである。勿論ルールは多少の制約を齎す。更には、平常広く取られるバトルフィールドが極端に狭まり、車内の座席やらポールやら吊り革やらが障害物として陣取り、電車の揺れがそこへ加わるというただそれだけの変化。


――そしてその、ただそれだけの変化、が、バトルサブウェイでの大きな大きな特異点なのであり、バトルサブウェイを廃人施設の1つに数える大きな大きな要因となっているのだった。
考えてもみてほしい、想像してもみてほしい。車両内の狭さが如何程のものなのか、安全運転とは言えどんなにか車体が揺れるのか、そんな中で繰り広げられるバトルというのがどういう有り様・光景であるのか。頭がおかしい、なんて。思わず零してしまったとて、むしろ当然とも言える事だろう。廃人施設へ嬉々として赴き利用するトレーナーなど大概気狂いレベルの連中ばかりである。適当な言い様なのは間違い無い。




バトルサブウェイにおいて、ポケモンリーグで言うところのチャンピオンのように、頂点に君臨するのがサブウェイマスターという役職に就く人間だ。この特殊な地下鉄は他地方の同様施設と比べて比較的設立が新しく、つまり歴も浅かった。形態が形態であるが故に開設を難航させていた、等といった事はまぁさて措き。当代でまだたったの2代目であるサブウェイマスター、その名を現在冠しているのが1組の双子――ノボリとクダリ、この2人の青年である。老年の初代から引き継いで今、彼らは前例通りに通常の地下鉄の駅長としても業務を行っている。




双子は幼少の頃よりポケモンと共に育ってきた。実力者が持ち得る戦略と采配、そして経験。此の世界に生きる不思議な生き物への深い理解に、敬い愛する心――双方これらの揃った確かな強者である。


そんなノボリ・クダリと非常に親しい間柄にあったのが、方々へ名声を広めつつあるスーパーモデルでありながらライモンシティジムの当代ジムリーダーでもあるカミツレ女史の他に、ギルという青年だった。彼はカロス地方のミアレという大きな街にてカフェを営んでいるのだが、出身はイッシュの大都市ヒウンシティだ。ライモンと1つ道路を挟んで隣り合う程度の距離であるから、行き来をして知り合うのに時間は掛からなかったし、自分のポケモンを持てば互いにバトルをして高め合うのも自然の道理だろう。
4人が集まったなら、カミツレとクダリが楽しそうにするのを見守るようなノボリとギルである。姉と弟と、そして母と父。そんなポジショニングの関係性でありつつ、時には良き対戦相手として、時には良き相談相手として。彼彼女らの相互の信頼は、厚い。




『弟分の可愛いクダリ君と、ちょっと心配性なノボリ君。ギル君は…んー、兄みたいに思う時も有れば、パパって呼びたくなっちゃう時も有るの。彼には大事な大事な猫ちゃんが居て、その子も含めた5人で遊ぶの、私大好きよ』

『カミツレちゃん、可愛くて美人さん!それに、一緒に居てすごく楽しい!だけど、仕事のし過ぎで倒れちゃわないか、僕心配。…ノボリ?ノボリは僕の半分!それからギルはね、バトル強くて、すごくて、心がおっきいの!どーーーしてもノボリに言えない事とか、たまに、ほんとたまにだけどね、相談するんだ』

『カミツレはとてもお綺麗で。普段の表情は涼やかにございますが、少々お転婆な部分も見受けられまして…けれどもわたくし、彼女の華やかに笑う様を大変好ましく思っております。クダリに関しましては、わたくしの半身であるとしか言いようが有りません。…ギル、ですか。彼は、えぇ、本当にお強い方でございます。バトルにおきましても、人としてにおきましても』

『カミツレ?あぁ、クールビューティーかと思いきやお転婆ちゃんだもんな。目が放せない可愛さだねありゃ。クダリはちっと子供っぽいが、良くも悪くもだからな、純粋でいいとも思うしお前もう少し大人しくしようぜとも思うし。でもまぁ逆に大人なノボリとでいいバランスになってんじゃねぇの。…たまに逆転するしな、あいつら』




***


サブウェイマスターと店長の地下鉄に関する話、とのことでネタというよりリクエストを賜りました。あんまり地下鉄に関連していない…気がするのでまたいつか、今度はバトルの様子なんかを書きたいですね。アレ疲れるんですけどね。バトル描写ね。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -