ズミとギルとレン



「ただの疑問ですが、ジムにも挑戦なさらないのですか?」

「や、しますよ。しますけど、気が向いた時だけですね。リーグに挑戦する訳でも無いし、一応他の地方で一通り集めてあるんで秘伝技使うのにも困ってないし」

「ちなみにその地方のリーグには?」

「あー、挑んではみたんですけど、2人目に勝ったところで棄権しました。どっちも辛勝だったので」

「そうでしたか」

「――でもそりゃ7・8年近くも前の話だろ」

「だから!横から入ってくんなよ!調理に集中しとけよ!」

「へーへーすんませんねー」

「うっぜぇ」

「(…恋人というか、兄妹や…友人のようでもあるな)」




「お待ちどうさん」

「――嗚呼、これは…美味しそうなペンネアラビアータだ」

「一般的なのはマトマだろうが、これはザロクを使っててな」

「甘辛いという訳ですか」

「そ。ま、大したもんではねぇが、どうぞご賞味あれってね」

「美味しそー」

「お前辛いの無理だろ」

「うん。だから夜辛くないやつ作って」

「はいよ我が儘お姫様」




「非常に美味しい1品でした。…バトルの腕だけで無く、料理の腕も上等とは…このズミ、正直に申しますと少々、貴方が妬ましい」

「そりゃどうも。プロに言ってもらえるとは光栄だ」

「こうなると、私の料理を是非食べて頂きたくなりますね」

「あーもう既に食った事有んぞ」

「…は?、あ、いえ…と言いますと?」

「んー、順を追って話すか。まず、カロスリーグに挑戦したのが1年前くらいだろ?で、あの後ミアレに部屋借りて住んでたんだよ。カフェでもやるかって思い立って、1年カフェでバイトして要領を得てから自分の店をってな。で、1ヶ月くらい前に晴れてこの店をオープンさせて現在に至るワケ」

「………つまり、その1年の間に既に私のレストランへ来て食事をしていた、と」

「3回行った。で、その内1回当たった。美味かったよ、とても。やっぱ他のシェフのとは根本から出来が違ってたわ」

「ありがとうございます。…腕だけでは料理人は務まりません、良い舌も持っていなければ。どうやらそちらも上等に肥えていらっしゃるようで」

「まぁ、親のおかげでちいせぇ頃からいいもんは食ってたからな」




「………そう、それで。本題ですが」

「おう。…問いの意図は明確になったか?」

「えぇ。………料理は作れども作れども消えるもの――」





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