男児が後の相棒に出逢う話



ギルが初めて自分のポケモンを手にしたのは、彼が4歳になって半年も経とうかという時の事である。


夕飯の頃に会社から帰ってきたその父親ウィルが、同僚にデルビルを貰ってきたのだと、真新しいモンスターボールを1つ。ニヤリと笑い掛けながら幼い彼を片腕で抱き上げて、お前の相棒になるだろうポケモンだ、と。まだまだ小さな手が、右と左とでしっかりとそれを持つ。ギルの母親、つまりウィルの妻アンナ、彼女譲りのダークゴールドの目はその球体に釘付けになっていて。
平生言葉少なで、表情も些か乏しく、少々活発さの物足りないようなこの息子に手の掛かった憶えはほとんどと無い。物をあれこれ欲しがる事も無かったし、とにかく聞き分けが良かったのだ。――そんなギルが、これだけ興味津々といった様子で何かに見入っているのは珍しい。ちらりとアンナを見遣れば目を丸くしていたのだが、自分に視線を向ける夫に気付くと、何処かほっとしたように表情を緩めるのだった。


ウィルが貰ってきたデルビルは、卵から孵ってまだたったの2日の赤ん坊で。よたよたと歩く様子は非常に危なっかしい。しかし中々やんちゃな性格をしているらしく、家の中の色々なものへ目を向け鼻をひくつかせてはえっちらおっちら寄っていくのだ。勿論アンナが主体となって世話をしてはいたが、無垢で元気なデルビルを常に見守っていたのはギルだった。まるで兄弟のようね、と、彼女は微笑む。




「ルーサー、だめ。かじるな」

「デルル…ワウ!」

「だめっていったらだめ。…おこるぞ」

「!…クゥン」

「ん」




最後には聞き分けたルーサー(やんちゃでイタズラ好きのデルビルの雄を少年はそう名付けた)の頭をいい子だとぐりぐり撫でる小さな小さな息子と、しょぼくれた後で途端嬉しそうに擦り寄る幼い幼いそのポケモン。これからもどんどん、信頼と友情を深めていくのだろう。今日も今日とてまた、ウィルが帰ってきたらこの事を話して聞かせなければ。自分と同じように喜ぶだろう夫の顔を想像しながらくすりと笑うアンナの視線の先では、ギルにじゃれつき押し倒して、楽しそうに仔デルビルが声を上げていた。





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