クー



「今日も眩しいね、クー。とても綺麗だ」

「…お前よぉ、…いや、やっぱいいわ」




起き出してくれば、目を細めた女が笑う。男は何とも言えないといった顔をして。もう1つ笑んだ音を零すと、学んだね、と。そりゃあ学びもする、これなんて生前からの事であるのだし。などと彼は心中で呟く。言い返す度に、だが私には眩しく見えて仕方が無いんだよ、とばかり、そうしてやはり目を細めた。確かに自分は光の御子だが、神性は女神であるスカアハの方が高いだろうに。くあ、と欠伸を零しながら彼はソファーへと身を沈めた。




「あ、でも1つ言っとく」

「ん?」

「――俺が居るからお前が居る。そんでお前が居るから俺が居る。光と影ってなぁそういうもんだ。なぁ?影の国の女王サマ」

「…言うようになったものだ。光の御子よ」




湯気の立つマグカップを手に此方へ寄ってきて、すぐ傍らに腰を落ち着けた女。それを眺めてから、幾らか煽るようにも言ってみれば。ちらりと自分に視線を遣って、口元を笑ませる。液体を流し込みこくりと上下した喉がほんの僅かに上から見えた。マグカップを攫って男もそれを飲み、ぺろりと唇を舐めて。




「ついでにもう1つ」

「1つと言ったのにね」

「ついでっつったろーが。あのな、綺麗とか言われても何っかこう、鳥肌立つ。あんま嬉しくねぇから。綺麗なのはアンタの方だっつの」

「そう?本当の事を言っただけなのだけどね。…まぁいいか。ありがとう、嬉しいよ」




さらりと流すのも彼女の十八番である。つまらなさげに眉を顰めて、彼はマグカップをローテーブルへと。それに腕を伸ばしたレンの手首を掴み、ゆるりと此方へ向く顔。じ、と見つめた。困ったように笑えど、何処か楽しげに、そんな彼女の唇に男は自分のそれを寄せる。




『彼の者クランの猛犬にしてアルスターの誉れ。また彼の者我が弟子にして我が寄る辺とも事。彼の者名をクー・フーリン。其は槍、其は光。半ば人に非ずして我が目を眩める者』


『――私には皆、眩しく見えて仕方無いのだよ。光の御子、輝く貌、騎士王、英雄王…征服王、彼もまた、眩しい。眩しいから、愛しい。相容れぬから、私も私として在れる』





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