クー



「忠義と聖誓に生きるがケルトの騎士共、などとは言うものだが、クー・フーリン、お前に関しては中々全てが収まるというものでも無いのよな。ふふ、可愛い我が弟子、クーよ、クランの猛犬は何かと言うのなら…そうだね、割合奔放な性をしていたか。それが1つ、私の気に入るところでもあったのだけど」




そう零して笑い、するりと己の頬へと手を滑らせた女。見下ろしてくる青灰の瞳には慈愛が湛えられている。いつになっても敵わねぇな、と心中で1人ごちながら、それの通り返す言葉も特に見付けられぬまま、彼女からゆるりと視線を逸らした。
おや、目が泳いだね。なんてまた1つ笑う。そしてくしゃりくしゃりと頭を撫でられて、女の指が髪を緩く引くのを甘受して。己の師だが、不思議な事に、スカアハの身体は極めて女であった。武芸の達者も達者な様子からしてみれば、驚く程にも。ふっくらとはしていない。余計な肉無く引き締まり、細すぎず太すぎず、手の皮にしてみても、豆が潰れて厚くなったという事は無いのだろう。あの頃はそれが異様であり、悔しくてならなかった時も有った程だ。男である自分が何故この、見て呉れにただの女である者に一向に抜く事叶わぬでいるのかと。まぁ、いつかにはこの女らしい手が、それはそれで愛しいものだと思うようにもなっていたが。




「…と、かと言うて、あの美丈夫の実直なまでの騎士道を並べたとしても、あれはあれで中々だが」

「…気の多い女だ。妬くぜ?」

「男の嫉妬程醜いものは無いと言うよ?」

「醜くて結構。俺はアンタの気をいつまでも引いていたいんだよお師匠サマ、何たってガキなんでな」

「ふふ、可愛い事だ」





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