クー
「ふふ、ようく憶えているよあの時の事は。本当に珍しく、お前が照れていたからね」
「うるせぇ。………で、お前は一体何作ってんだ。魔石削ってんのは分かるがよ、また耳飾りでも?」
「まぁ見ていなさいな」
「俺にくれるやつ?」
「生憎、私用だ」
「そりゃ残念」
「――ケルト十字、か」
「まず土地が違う、というのも有るし、今や見ないようになってしまった。懐かしいだろう」
「魔石はどっから調達してきたんだ?それにすら馴れた気を感じたが…」
「勿論我らが故郷の地から、だよ。リンに頼んで取り寄せてもらったんだ。これだけ良いものだ、高くついたろうに破格に優しい取り引きをしてくれて、なぁ」
「あー、あの嬢ちゃんもお前にゃ甘いもんなぁ。破格に優しい取り引きとやらは一体どんな?」
「ルーンを掛けた、祝福と防護の礼装、というよりかは御守りを幾つか作ってほしいと」
「やすすぎだろ…2重の意味で」
「だろう。余りにもやすすぎて全く釣り合いやしない。流石にそれでは此方の気も済まないから、加えて2つ3つ程、対価とは別に礼として贈り物を添えようと思っているんだが…目下支索中だ。お前も何かいい案が有ったら言ってくれるとありがたい」
「おう。………。あの時もこうやって?」
「いいやまさか。これは私用だし、特別なものでも何でも無いからこうやって簡単に、楽に済ませているだけさ。何せ彫り込みも面倒だしね。…ふふ、安心をし。お前にやったそれは私が手ずから、丹念に研磨して誂え拵えた心籠りのものだから」
「………、…ん」
「レン、それちょっと貸せ」
「?あぁ、構わないが」
「――…ん、ほらよ」
「…ありがとう。…、とだけ言って終えてしまいたくないくらいには、嬉しいな」
「…。正直言うと、教えてくれりゃあ良かったのにって思ってる」
「おや、それはどうして」
「………」
「…あぁ、成る程。ふふふ。なぁ、セタンタ」
「…」
「その気持ちで、十分だ。それだけで十分だとも。いいや、ルーンを掛けたくれたのだから二十分じゃないか。なぁセタンタ、お前は本当にいい子だね」
「………だからそういう言い方止めろっつってんだろ、いい子でも何でもねぇよ」
「おやおや、照れているようだ光の御子殿は」
「うーるーせーえー!」