イレギュラー



死に様や経緯は多少違っていても、助けたかった人達は死んでしまった。そして大火災が起きて、結局、結末は変わらなかったのだと。悔やんでも悔やみきれない。大口を叩いて、この様だ。肌をぬらぬらと熱が這う。噛み締めた奥歯がギシリと鳴った。熱い、熱い、熱い。魔術を行使して火傷は免れていても、傷心、否、胸の奥は焼身中で。…ハハ、冗談言えるならまだ大丈夫だなあたし。
両の拳へ力を籠め、グッと前を向く。火の、海。悔やんで悲しむ暇は今には無い、挫けている場合じゃない。時間を巻き戻す術などあたしには持ち得ていないのだから、ひたすら進むしか無いのだ。過去を置いて、歩いていかなければ。いつか顧みてごめんなさいと謝るために、今はただ、前を向いて、行こう、出来る事をしよう。


――彼女は何処に居るだろうか。そも、まだ。
あたしを庇って泥に呑まれたあの人の行方を真っ先に、最優先に探したい。けど、望みは薄い事も判っている、解っているのだ。大火災、原作では生き残りはごくごく僅かであった。でも分からないだろう、風の魔術で火を払えば救助が出来た数は増えるかもしれないのだから。それにきっと、彼女だって、そうするあたしを望んでいるはず。





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